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京都人形三昧 番外編 愛でたきもの 雛とミニチュアのお道具展 −ミニチュアで織りなす『源氏物語』の世界−

豪華な雛飾りの魅力は、お内裏様だけではなく、そのお道具にもあると私は思う。お膳やお重、鏡台、違い棚など、一つひとつ塗も模様もきちんと施されたおひな様のお道具は、おもちゃなどではなく、立派な工芸品だ。その小さなお道具だけで、ひとつの世界を完成していることに驚く。

京都・百万遍にある思文閣美術館では4月6日まで「愛でたきもの 雛とミニチュアのお道具展 ミニチュアで織りなす『源氏物語』の世界」を開催中だ。

おひな様のお道具がお膳や家具調度に始まり、楽器、装身具など多岐にわたってそろっている。小さな琴や琵琶はいまにも音楽を奏でそうだ。貝合わせは通常蛤で作られるが、おひな様用は小さなシジミを使う。一つひとつに金泥で彩色が施されている。貝桶も金蒔絵がきれいだ。

中でも目を見張るのが台所道具と食器類。関西の雛飾りのお道具だが、お茶碗やお椀、湯飲み、急須など、そのまま所帯が持てそうなぐらいの品揃え。水屋にもきちんと道具が収まり、機能的に見える。ここで腕まくりをして立ち働くおひな様の姿を想像して、ちょっとおかしくなった。ほかにも源氏物語の豆本や源氏物語蒔絵小箱、源氏物語図絵印籠など源氏物語千年紀にちなんだ展示も。

そこで「夢浮橋」の絵を見ていた女性、「薫さんってモテないわよねぇ」とひと言。やっぱりみんなそう思ってるんだ。


Shibunkaku

■思文閣美術館

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京都人形三昧その3 京都国立博物館&京都文化博物館

写真は京都文化博物館Kyoubun

ひな人形やそのお道具というものは、なぜか私の心を惹きつける。桃の節句を祝う必要がなくなっても、やっぱりひな飾りには目を奪われる。おそらく、現実にはあり得ないサイズの道具が、非現実の世界へ誘うからだろう。京都国立博物館で行われた特集陳列「雛まつりとお人形」、京都文化博物館のコレクション展「池大雅と雛人形」は、おひな様や人形の数々に現実を忘れるひとときだった。

京都文化博物館はおひな様を年代順に近世まで展示。おひな様の作りや顔、飾り方の変遷がよくわかる展示だった。京都国立博物館も同様だが、さらに嵯峨人形や御所人形、衣装人形など幅広く展示されていた。また、人形の背景に使っている屏風や襖絵が重文だったりするのは、さすが国立の博物館。人形に気を取られているとうっかり見落としてしまいそうだが、そんなところにも目をひかれる展示だった。

おひな様の原形は3月の上巳の節句にからだをなでて穢れやわざわいを移し、川などに流す「形代」。これは古墳時代から作られており、木や草で作られたものだった。それが幼子の健やかな成長を祈る天児(あまがつ)や這子(ほうこ)となり、さらに二つ一組になって、立ち雛や紙雛が生まれた。ようやくここに来て男女一対だ。形代を原形とした立ち雛はその後もあまり形を変えずに現代に受け継がれている。

一方、いまよく見かけるお内裏様とおひな様の座り雛は、立ち雛とは系統が異なる。こちらは寛永年間(17世紀前半)ごろから作られるようになったようだ。寛永雛と呼ばれるおひな様はまだ頭髪も塗でポーズも何となくぎこちない。元禄年間に作られるようになった元禄雛は女雛に手先が付き、装束も十二単風で豪華になってくる。

享保年間(1716〜1735)に流行したのが享保雛。高さ50センチぐらいの大ぶりなおひな様は髪が植えられ、男雛は冠をかぶり、衣冠束帯を身につけて太刀を差し、笏を手に持つ。女雛は豪華な冠にボリュームのある十二単を付けている。顔も写実的で、瓜実顔の美男美女に作られている。目が笑っているようで、じっと見つめていると笑い声まで聞こえそうで、実のところちょっぴり怖い。

次に流行したのが次郎左衛門雛。これはまん丸な顔に引目かぎ鼻で可愛らしい。京都の人形師の雛屋次郎左衛門が作り始めたとされることからこう呼ばれる。一方江戸では18世紀後半に古今雛が作られた。こちらは瓜実顔で、いまの雛人形もこの系統を受け継いでいる。また、公家社会では有職の作法に従って忠実に再現された有職雛が作られた。装束によって束帯雛や直衣雛、狩衣雛などが作られた。

京都国立博物館ではこうした歴代の雛に加え、明治時代に造られた軍装の雛飾りも展示。これは軍服姿の明治天皇をモデルにしたと思われる雛人形で、一番手前には馬車に乗った親王の姿も見られる珍しいもの。随身なども洋装で、当時の式典の様子をよく伝えている。

内裏雛の左右やお道具が東西で異なるのは宝鏡寺の項でお伝えしたが、そのほか、関西では「御殿飾り」という飾り方がある。関東では5段、7段などの豪華な段飾りが主流だが、関西では内裏雛の住まいである御殿を最上段に置き、奥に内裏雛、その前に官女などを置く。お道具は関東ほど豪華ではなく、おくどさんや水屋などが飾られるのは既述の通りである。現在はほとんど飾られることはない。今回、京都文化博物館では、大正時代の豪華な御殿雛飾りが展示されていた。そのほか、源氏枠という飾り方もある。こちらは屋根のない御殿飾りのようなもので、源氏物語絵巻の構図のように上からも雛を眺めることができるため、こう呼ばれる。

なお、期間は京都国立博物館が3月30日、京都文化博物館が4月13日まで。おひな様の時期なんて過ぎてしまったと思わないで。4月8日は旧暦の桃の節句。ことしはもう一度、ひな祭りを楽しんではいかがだろう。


Kyouhaku

こちらは京都国立博物館の旧館とロダンの「考える人」

■京都国立博物館
■京都文化博物館

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京都人形三昧その2 辻村寿三郎 新作人形展〜平成アールデコ〜

Jusaburo

人形の魅力というのは、どこにあるのだろう。きれい、かわいい、美しい…。そんなありきたりな言葉では言い表せないものを人形は持っているように思う。例えば、精緻な技で作られたひな人形や日本人形は美しい。でも、人形と真正面から対峙すると、時に薄ら寒く感じるのはなぜだろう。市松人形のつぶらな瞳、赤い唇。だけど、だけど可愛らしい顔の向こうに得体のしれない不気味さを感じるのは私だけではないだろう。

そんな人形のデーモニッシュな魅力を最大限に生かした作家が現代の人形師、辻村寿三郎氏だろう。氏の人形は様々な表情を持つ。妖艶な人形、何かを語りかけるかのような、ドラマチックな表情の作品、そして愛らしいうさぎたち。だけど、少しずつ不気味さを抱えている。それが魅力となって見る人を惹きつける。

京都高島屋グランドホールでは「辻村寿三郎 新作人形展〜平成アールデコ〜」を開催中だ。新作人形展とあるが、意外に旧作も多い。久々の邂逅に、懐かしく思える人形もある。例えば、南総里見八犬伝の伏姫や八房(伏姫を見ると、「あいーん」といいたくなるのは内緒だ)。そして大蛇が象徴的なオロチなど。そのほか阿蘭陀異聞のシリーズや西鶴五人女、南北五人女、十二星座などの展示も。

うれしかったのは創作人形ドラマ「源氏絵巻縁起」の展示。源氏物語を辻村流にアレンジした作品で、宮中でひどいいじめにあった桐壺更衣はとうとう気が触れてしまうという哀れなストーリー。

ジャポニカや平成アールデコのシリーズは妖艶でスレンダーな美女たちの競演だ。瞳のないまなざしは底知れぬ魅力と魔力をたたえている。それにしても人形なのに何と色っぽいのだろう。もし私が男なら、人形と間違いを犯してしまうかもしれない。乱歩の「押絵と旅する男」の世界。そういえば、辻村氏は押し絵と旅する男を人形芝居にしている。今回、会場ではそのビデオが流されていた。また、小さなステージでは平成アールデコのライブも。

今回、人形たちをじっくりとそばで見て感じたのがその衣装や顔、頭の細やかな仕事。人形の衣装には明治から昭和にかけての古裂を使用しているという。それが見事に人形とそのストーリーにマッチした衣装に生まれ変わっている。洋装の人形ではスパンコールやビーズ、レースなどを多用、実にゴージャスだ。

そんなところまでじっくり見ていくと、小規模な展示ながら1時間半はかかる。見終わったあとには疲れに似た充足感が残った。久々の辻村寿三郎を思いきり堪能できる展示だった。

なお、会期は月24日まで。22日、23日は辻村寿三郎氏本人が来場、サイン会も行われる。いまならきものでの来場者は無料。夕方6時以降はトワイライトサービスで入場料半額。

■辻村寿三郎公式ホームページ
■京都高島屋

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「源氏かおり抄の世界」展 〜香りで綴る源氏物語〜

Sugimotoke

源氏物語と香りは切っても切り離せない関係にある。物語の随所で香りは大きな役割を果たす。夜の闇がいまよりも濃かった時代、人々は香りで人を区別していたのかもしれない。例えば、空蝉は自分の寝所に忍んできた人物を、香りで光源氏と判断したわけだし、光源氏は膝行りでてきた末摘花の香りに「さすがは高貴の姫君」と納得している。

また、物語では香りの使い方でその人物や集団の性格を表現している部分もある。例えば「花宴」の巻では、薫き物が煙いほどにたかれていて、女たちが衣擦れの音をさせながら起ち居する右大臣邸の様子を「奥まりたるけはひたちおくれ、今めかしきことを好みたる」と批判的に描いている。「鈴虫」の女三の宮の持仏開眼供養の場面でも同様のことが描かれている。

香りへのこだわりは「梅枝」の巻にもよくあらわれている。ここでは薫き物合わせの様子から、その種類まで書かれており、平安時代の香りを知るよすがとなっている。そして極めつけは自分自身がかぐわしい香りを放つ、薫と薫に対抗してよいお香を焚きしめている匂宮の二人。この二人は光源氏のように「光る」ほど美しくはないけれど、香ったり、匂ったりする程度には美しいのである。

そのほかにも香りが登場するシーンは数多い。ことほど左様に源氏物語と香りは切り離すことのできないものなのである。

その源氏物語五十四帖の世界を、様々な香りや形で表現したのが「源氏かおり抄の世界」展〜香りで綴る源氏物語〜。お香の老舗「松栄堂」が源氏物語千年紀を記念して開催しているもの。各帖を香りやその使い方、容器などで表現する。例えば、花宴であれば、桜模様の匂い箱に香を入れる、須磨であれば海の風物を描いた貝桶に貝の形の匂い袋を入れるといった感じ。と書いてもとても伝わりにくいと思う。これはぜひ現地で見ていただきたい。

会場は築100年を超える町家「杉本家住宅」。室内にはほのかな薫き物の香りが漂う。あるかないかのかすかな香りは、オープンな作りの日本家屋だから似合うのかもしれない。機密性の高いマンションでは、加減を間違えると右大臣家のようになってしまうだろう。展示のほか、聞香も体験できる。やわらかな伽羅の香りは奥ゆかしさに満ちている。

もちろん、会場の住宅そのものにも目を向けてほしい。これは伝統的な町家として京都指定の有形文化財にもなっている。どっしりと黒光りする柱、苔むした庭、荘厳な仏間、どこを見ても堂々たる風格が漂う。杉本家は呉服商奈良屋を営んでいた。そのため、入り口を入った左右には店の間がふたつ向かい合っている。今回展示に使われた座敷は12室。どこまで部屋が続いているのかと思うぐらい広い家屋だ。さらにその奥には、今回は公開されていない土蔵や漬物小屋もある。おくどさんのある台所は一間幅で十二畳分。太い梁や柱に目を見張る。また、同家は祇園祭の際、伯牙山のお飾り場として店の間に屏風や祭りに使われる懸装品が飾られる。京の町衆の伝統を伝える京町家なのである。

源氏物語を香りで表現する展示や聞香体験も目新しく、楽しいものだが、風格漂う京町家の内部を目にすることは少なく、貴重なチャンスだ。開催は3月23日まで。残りあと2日だが、もし機会があれば足を運んでほしい。

■松栄堂 
■杉本家住宅 

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京都人形三昧 その1 宝鏡寺

Houkyouji

いつしか、雛をし据ゑて、そそきゐたまへる。三尺の御厨子一具に、品々しつらひ据ゑて、また小さき屋ども作り集めて、 たてまつりたまへるを、ところせきまで遊びひろげたまへり。(源氏物語 紅葉賀)

光源氏の邸に誘拐同然に連れてこられた少女の紫の上は、祖母を亡くした悲しみも少しずつ癒え、新年を迎えた。上記はその一場面、ひいな遊びを楽しんでいる様子である。小さな道具を棚に並べたものや、いくつもある小さな御殿は光源氏からのプレゼント。財力のある光源氏が仕立てたものだ、少女の紫の上にはとても魅力的なおもちゃだっただろう。

平安時代の昔から、人形遊びは女の子の生活から切り離せないものだった。それは出家したとしても同じだ。堀川寺之内にある宝鏡寺は代々皇族の女子が住職となった寺。それだけに、歴代の皇女が慈しんだ人形が数多く所蔵され「人形の寺」と呼ばれている。


Kouchiki

同寺では毎年春と秋に所蔵の人形を展示する人形展を開催している。ことしの春の人形展は1月1日から4月3日まで。今回は皇女和宮をテーマにした展示のほか、ひな人形をはじめ、孝明天皇ご遺愛の御所人形「孝明さん」などたくさんの人形を見ることができる。万勢伊さんという人形はおとらさん、おたけさんというお付きの人形を従えている。さすがは高貴の人のお人形だ。

今回、うれしかったのが撮影専用の人形が置かれていたこと。直衣・小袿姿の有職雛と等身大の小袿姿の人形が展示されていた。内裏雛はノーブルな顔立ちで写実的。お内裏様が向かって右に座っているが、これは京風の飾り方。天子は南面して、先に日を浴びるという宮中の席次に従って、右に置かれるそうだ。逆に関東では洋風の、右(向かって左)に偉い人が座るという考え方から、左右が逆になったという。

また、お雛様のお道具がおくどさんと水屋なのも関西の特徴。見た目のハデさはないけれども、これは女子に家事を習わせるためのものだったとか。

Hinamatsuri

桃の節句を迎えた3月から4月にかけては、京都各所で雛の展示が行われている。このシリーズも、いましばらく続く「予定」だ。

http://www.hokyoji.net/

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麩嘉の麩まんじゅう

Fumanjuu

良質の水に恵まれた京都では、様々な美味、食材が水によって培われてきた。豆腐しかり、伏見の銘酒しかり。いや、京料理そのものの味わいも水が作り出したと言ってよいかもしれない。

京料理の脇役として欠かせない食材のひとつが「生麩」である。モチモチとした独特の歯ごたえ、なめらかな舌触り。味というほどの味はないが、彩りもよく、食感が楽しいモノでもある。生麩は小麦粉を水で練り、デンプン質を洗い流した小麦タンパク、つまりはグルテンの塊。中学校ぐらいの時、理科の実験で作ったことのある人もいるかもしれないが、やはり生麩づくりにも良質の水は欠かせない。

西桐院椹木町上ルにある「麩嘉」は文化文政年間創業の生麩の専門店だ。店名は決して「不可」とか「負荷」と同じような抑揚で読んではいけない。「ふぅかぁ」とやさしげに発音してほしい。同店の本店がある西桐院通はよい地下水が湧出するところ。本店脇には京洛七名水のひとつ、滋野井の流れを汲む小さな井戸がある。

生麩には様々な種類があるが、同店の名物が麩まんじゅう。甘さをぐっと押さえたさらし餡を生麩で包んだお菓子だ。京料理のお弁当の片隅に入っていることもたまにある。モチモチの食感はお餅ともまた異なる。うっすら緑色の生麩はヨモギ入りかと思ったら、実は青のり入り。口に入れると磯の香りがいっぱいに広がる。餡とのバランスが絶妙だ。1個はわずかに一口大。もっちりツルリとした口当たりのよさに、2個、3個と食べたくなってしまう。

西桐院の本店は、由緒正しき町家のいかにも老舗といったたたずまい。かわいいおかめさんののれんが、少しは敷居を低くしてくれているが、ちょっと足を運びにくい気もする。そんな方におすすめなのが、錦小路堺町角にある錦店。京阪や阪急の駅からも徒歩で行け、入りやすい店構え。ただし、時間帯によっては麩まんじゅうが品切れの場合もあるので注意。

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写真は錦店
■京都市中京区錦小路通堺町角
■075−221−4533 FAX075−221−1608
■9時30分〜17時30分、毎月曜、2月から8月までの最終日曜休み。

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黄金色の京都御所

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京都御所は常緑樹の松と、楓や銀杏などの落葉樹がバランスよく植えられ、四季を通じて美しい。かなりの樹齢の木も多く、街中にありながら、自然の精気を感じられるパワースポットだ。

その中に1本、ほとんど葉は落ちているのに、驚くような自己主張をする銀杏を見つけた。散り敷いた葉が周囲に広がり、さながら黄金の丘。立派な木の多い御所の中でもとりわけ見事だった。

写真はその銀杏。てっぺんまで入らないので、気まぐれでアスペクト比1:1にトリミングしてみた。

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近江八幡・酒游館

滋賀県は、中央に日本一の湖・琵琶湖を擁する近畿の水瓶。京都の陰に隠れていささか地味に感じるが、史跡や国宝、重要文化財も多く、おいしいものにも恵まれている。

近江名物といえば、ふなずしだとか、鮎の甘露煮だとか、いろいろあるけれども、私は「赤コンニャク」が好きだ。コンニャクといえば、灰色か白が定番だが、近江八幡では「赤」と決まっている。べんがら塗のような、ちょっと錆びた赤はコンニャクとしてみると衝撃的だが、これを土佐煮にすると実においしい。別に唐辛子が入っているわけではない。その由来はよくわかっていないが、ハデ好きの殿様、織田信長に由来するとも言われる。なるほど、コンニャクまで赤がいいというのは、何となく信長っぽい気もする。

ほかに近江の名物といえば、近江牛に、湖の淡水魚、そして近江米。近江八幡なら、丁字麩もうまい。そうした近江の味がぎゅっとひとまとめに詰まったのが、近江八幡の酒游館の「ことぶき膳(梅)」(2520円)。同店は西勝酒造が営業している。享保二年(1717年)創業の老舗の造り酒屋。店舗は酒を熟成させる蔵を改装したもの。

料理は一膳一重。お膳には近江牛のしぐれ煮や赤だし、炊き合わせ。お重には近江牛のたたき、赤コンニャクの土佐煮、丁字麩の芥子酢みそ和え、鮎の甘露煮など、近江名物がぎっしり。もちろん、ご飯のお米は近江米に違いない。さらに食前酒として西勝酒造の酒が付いてくる。私たちの時は「風花」という濁り酒が供された。こうして並べると、近江の食の豊かさがよくわかる。織田信長も賞味したであろう濁り酒や赤コンニャク。近江の歴史に思いをはせようと思ったけど、酔いに霞んだ頭は目の前の美味に気を取られるばかりだった。
■523-0862 滋賀県近江八幡市仲屋町中21
■(0748)32-2054 FAX(0748)32-6336
■午前10:30〜午後5:00 火曜定休
http://www.shuyukan.com/index.html

Shuyukan

写真は「ことぶき膳」のお重。

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古都暮色

本日はあれこれ細かい能書きはなし。
古都の夕暮れをお楽しみください。


Yuuhi

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石黒香舗のにほひ袋

匂い袋は京土産の定番のひとつ。といっても、観光地の土産物店などで売っている、ほんのり香水の香りの匂い袋ではない。せっかくの京都だ。本格的な香りを手に入れたい。

京都にはお香の老舗がいくつもある。私がよく訪れるのは三条通柳馬場西入ルの「石黒香舗」安政二年(1855年)創業の匂い袋専門店だ。店内は香木の香りで満ちている。定番の巾着型の匂い袋のほか、同店オリジナルの干支や花、動物など様々な意匠を凝らした匂い袋は見ているだけで楽しい。

店の奥では好みの袋に好みの香りを入れてくれる実演販売もしている。贈る人の顔を思い浮かべながら、袋を選んだり、香りを選ぶのは楽しい。香りは白檀のみのもの、定番の香り、さらにさわやかさを増したもの、そしてじゃこう入りの高級品がある。小さなものは347円からと、価格もお手ごろなのがうれしい。

匂い袋の香りは香木の配合によって複雑に変化する。白檀だけのものは甘く酸味のある香りが特徴。白檀は匂い袋のベースになる香木でもある。そこへ丁字(西洋料理で使うクローブのこと)や桂皮(シナモン)、大茴香(中華料理で使う八角)、龍脳など様々な香料を混ぜ、好みの香りを作り上げていく。甘松はそれ単独ではいい香りとは言い難いが、香りに深みを出すには欠かせない。

源氏物語でもお香は随所に登場する。光源氏の女君の中でも一番いいお香を持っていたと考えられるのが、末摘花。彼女は没落貴族で邸は荒れ果て、食べるものもろくになく、薄汚れた衣装を着てはいたが、お香だけは先祖伝来の高級品を持っていた。光源氏が末摘花に初めてであったとき、えび香のいい香りが漂ってきたので、光源氏は「やっぱり」と思っている。

何が「やっぱり」なのか。さすがにいい香りを使っているので、やっぱり宮家の姫君、高貴な出自だというのである。付け加えておけば、このとき、光源氏は末摘花の容貌をまだ知らない。彼女に幻想を抱いている段階である。

ほかにも末摘花は、香木でできた衣装箱を持っていたり、乳母子の侍従が筑紫へ旅立つときには伝来の薫衣香を贈ったりしている。不美人だといわれても、世間知らずとばかにされても、守り続けてきた格式だけは誰にも負けないのが末摘花だ。成り上がり者では手に入れられない香りを、末摘花はまとっていたのである。
Photo
写真は石黒香舗で作ってもらった匂い袋。黒い招き猫の柄がかわいい左の紫は、私の好きな龍脳多めのさわやかな香り。右の赤はじゃこう入りの極品。正絹の金襴の袋に入っている。

■ 〒604-8111 京都市中京区三条通り柳馬場西入
■ TEL 075-221-1781
■ FAX 075-221-8091
http://ishiguro-kouho.com/index.html

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