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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学27」 親の考えに振り回される子どもたち(1)

Kinonemichi

写真は鞍馬の木の根道。夕霧君の前途はこんな感じで多難そうです。

■意外に教育パパな光源氏

さて、葵の上が出産した光源氏の息子を覚えておいででしょうか。あれから、秘密の息子の冷泉帝はしばしば登場しましたが、こちらはちょっと影うすめ。前の左大臣邸で大切に育てられてはいるようですが、あまり話題になることもありませんでした。

その息子が、ここへ来てようやくデビューです。彼の名前を「夕霧」と呼びます。ことし12歳。元服をして大人の仲間入りをする年ごろです。で、光源氏は恋多き男から、いきなり教育パパへと変身を遂げます。意外な一面に、読者もビックリ。

元服をしたら位をもらいます。光源氏ほどの位の人の息子なら、普通は四位に叙せられます。でも、光源氏は「まだ若い子に、思い通りになるからってそんな高い位に付けちゃうのはありきたりだよなぁ」と考えて、六位に付けてしまいました。

六位というのは四位とはまったく違う身分です。当時、昇殿を許されるのは五位以上の貴族と呼ばれる人たちだけ。六位以下は「地下(ぢげ)」と呼び、昇殿も許されませんでした。つまり、光源氏は自分の息子の社会人生活をことさらに低い身分からスタートさせたのです。当時は位階によって着られる装束の色も決まっていました。つまり、色を見れば一目でその人の位がわかるのです。六位は浅葱。夕霧は元服を終えて、浅葱色の装束でしょんぼりしています。もしかしたら、お友だちは五位や四位かもしれないのに、自分一人だけが浅葱色です。祖母の大宮もこれには不憫でたまりません。この件で光源氏と話をします。

光源氏はどうやら息子を大学に行かせるつもりのようです。当時の大学というのは官吏を養成するところです。でも、どちらかというと中流以下の家の子弟が行くところと考えられていました。で、光源氏の長男が大学に行くなんて、異例中の異例です。

光源氏は「私は宮中で育って世間知らずでした。学問は帝から直接教えていただきましたが、およばないところだらけです。こんなつまらない親に子が勝るというのは難しいと思い、この話を決めました。それに、身分が高いからなんでも思いのままになると思っていたら、権勢が衰えたときに人から軽蔑されるかもしれません。やっぱり基礎は学問が必要ですよ」などと訳を話します。

光源氏がここまで考えたのは、やはり須磨の経験が身にしみているのかもしれません。世の趨勢は右大臣一派に移り、自分は須磨へ退いた日々。多くの人が背き、それまでおもねっていた人たちでさえ、手のひらを返したように冷たくなった経験が光源氏の心にしみているのでしょう。

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

※ただいま若葉マークの源氏物語ブログ別館「千年前から恋してる!」公開中。物語は玉鬘の巻です。
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石黒香舗のにほひ袋

匂い袋は京土産の定番のひとつ。といっても、観光地の土産物店などで売っている、ほんのり香水の香りの匂い袋ではない。せっかくの京都だ。本格的な香りを手に入れたい。

京都にはお香の老舗がいくつもある。私がよく訪れるのは三条通柳馬場西入ルの「石黒香舗」安政二年(1855年)創業の匂い袋専門店だ。店内は香木の香りで満ちている。定番の巾着型の匂い袋のほか、同店オリジナルの干支や花、動物など様々な意匠を凝らした匂い袋は見ているだけで楽しい。

店の奥では好みの袋に好みの香りを入れてくれる実演販売もしている。贈る人の顔を思い浮かべながら、袋を選んだり、香りを選ぶのは楽しい。香りは白檀のみのもの、定番の香り、さらにさわやかさを増したもの、そしてじゃこう入りの高級品がある。小さなものは347円からと、価格もお手ごろなのがうれしい。

匂い袋の香りは香木の配合によって複雑に変化する。白檀だけのものは甘く酸味のある香りが特徴。白檀は匂い袋のベースになる香木でもある。そこへ丁字(西洋料理で使うクローブのこと)や桂皮(シナモン)、大茴香(中華料理で使う八角)、龍脳など様々な香料を混ぜ、好みの香りを作り上げていく。甘松はそれ単独ではいい香りとは言い難いが、香りに深みを出すには欠かせない。

源氏物語でもお香は随所に登場する。光源氏の女君の中でも一番いいお香を持っていたと考えられるのが、末摘花。彼女は没落貴族で邸は荒れ果て、食べるものもろくになく、薄汚れた衣装を着てはいたが、お香だけは先祖伝来の高級品を持っていた。光源氏が末摘花に初めてであったとき、えび香のいい香りが漂ってきたので、光源氏は「やっぱり」と思っている。

何が「やっぱり」なのか。さすがにいい香りを使っているので、やっぱり宮家の姫君、高貴な出自だというのである。付け加えておけば、このとき、光源氏は末摘花の容貌をまだ知らない。彼女に幻想を抱いている段階である。

ほかにも末摘花は、香木でできた衣装箱を持っていたり、乳母子の侍従が筑紫へ旅立つときには伝来の薫衣香を贈ったりしている。不美人だといわれても、世間知らずとばかにされても、守り続けてきた格式だけは誰にも負けないのが末摘花だ。成り上がり者では手に入れられない香りを、末摘花はまとっていたのである。
Photo
写真は石黒香舗で作ってもらった匂い袋。黒い招き猫の柄がかわいい左の紫は、私の好きな龍脳多めのさわやかな香り。右の赤はじゃこう入りの極品。正絹の金襴の袋に入っている。

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