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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学40」 子どものような女の魅力(2)

■立ち後れてしまった悔恨

女三の宮の軽率さに失望した光源氏は、過去関わった女性を見る目も変わってしまったような気がします。特に須磨流謫の原因になった朧月夜。若いころ、恋の最中に分かれなければならなかっただけに、彼女への思いは特別です。その思いは京に戻っても変わらず、女三の宮の降嫁後、二人は再び逢瀬を持ちました(7月6日付本コラム参照)。

そのときにも光源氏は、なびきやすい彼女を批判していましたが、最近は女三の宮の事件もあって彼女のことを思い出し、さらに彼女の軽率さを軽蔑するようになっていました。ところが、ある日光源氏の元にニュースが届きます。朧月夜が念願の出家を遂げたというのです。彼女は朱雀院の出家後、ずっと自分も出家する準備をしていたのでしょう。

これを聞いた光源氏の心中はいかばかりだったでしょうか。かつて愛した女性が出家する寂しさ、少し見下していた女性に後れを取ってしまった情けなさ、自分もできない出家を遂げたうらやましさ、出家することなど、一言も伝えてくれなかったことに対する恨めしさ。複雑な思いが光源氏の胸を去来します。

さっそく、光源氏は見舞いの手紙を送ります。「人生の無常はわかっていますが、いままで主家もできず、あなたに後れを取ってしまったのが残念です。あなたが私を見捨てても、きっと毎日の回向のおつとめの時には、私を一番最初に入れてくれるよね」と、ちょっと軽蔑していたことも忘れて、かなりあつかましい手紙を送ります。

これに対し、朧月夜は二人の恋路こそ懐かしく思うものの、もう俗世のことは断ち切った身です。これが最後と考え、心を込めて手紙をしたためます。そこには「回向は一切衆生のためのもの。もちろん、あなたも含まれます」と、見事な筆跡で書かれていました。見事なかわし方です。光源氏としてはちょっとおもしろくありません。

光源氏は紫の上に朧月夜が出家したことを伝えます。光源氏としてはもう、彼女とは切れてしまったことをアピールしたかったのでしょう。そのついでに彼女のことや、朝顔の斎院のことなどを話したりします。ついでに朧月夜に袈裟などを作ってあげるよう依頼します。

この場面、光源氏は何を考えているのかよく分かりません。おそらく家刀自としての紫の上を信頼しているからこその依頼でしょうが、愛人の法服を作らせるなんてあまりに思いやりに欠けた言動だと思うのです。しかも紫の上はかねてから出家を願いながら、聞き入れてもらえない状況が続いています。そんなときにこのような話を聞かされた紫の上。光源氏が朧月夜に立ち後れてしまった…と悔やんでいるように、紫の上もまた、取り残された…という思いがぬぐえなかったのではないでしょうか。

ここでは二人の女性が正反対にも描かれています。しっかりと家政を任せられる紫の上に対し、自分がいなければどうにかなりそうな女三の宮。男性はどちらに魅力を覚えるのでしょうか。女三の宮が世間知らずで幼いのは彼女やその周囲の失敗ですが、オンナとしてはそれもいいのかな、と思ったりします。(この項終わり) 

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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