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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学39」 隠したはずの手紙が… (1)

■紫の上が息を引き取った?
あの女楽の日以来、紫の上は病みついたまま、いっこうに回復の気配を見せません。光源氏も心を込めて看病しますが、はかばかしくありません。本当のところなら、紫の上一人に心を注ぎたいところですが、彼女よりも身分の高い女三宮についてはないがしろにするわけにもいかず、時折は、女三宮のところにも足を運ぶことがありました。

しかし、そうやってたまに足を運んでも、やはり心にかかっているのは紫の上のこと。いまはどうしているのか、苦しんではいないか、ふとした折に彼女のことが気になって仕方ありません。一度行くとすぐに帰るわけにもいかず、紫の上を気にかけながら、女三宮のもとで過ごしていました。

そこへやってきたのは二条院からの使い。「もしや」の悪い予感は当たりました。「紫の上が息を引き取られました」という知らせ。光源氏は目の前が真っ暗になったような気持ちです。急いで二条院に戻ると、女房たちも取り乱して右往左往しています。快癒祈願の御修法をしていた僧たちも祭壇を壊し、まばらになっています。まさに人が死んだという状況です。

光源氏は、もう一度目と目を合わせたい、臨終に会えなかったのが悲しいと嘆き、物の怪の仕業ではないかと祈祷を続けさせます。すると、なんということでしょう。紫の上が病みついていた間、いっこうに姿を見せなかった物の怪が依りましの童にのりうつり、大きな声を上げます。同時に、紫の上の顔に血の気がよみがえり、息を吹き返したのです。

物の怪は「六条院お一人に伝えたいことがあります」と人払いを告げます。「命もなくなりそうに嘆いている姿を見ると、昔の恋心が残っているからこそ、このような浅ましい姿になりながらもこうして現れたのです、本当は姿など見せとうはなかった」などと告げます。髪を乱しながら嘆くその姿は、あのときの。

そう、この物の怪はあの六条御息所の死霊だったのです。光源氏は「よくない狐などが死者の名誉を汚すこともある。はっきり名乗り、誰も知らないようなことを言えば信じる」と、毅然と対応しようとします。しかしその口から出てくるのは確かに光源氏と六条御息所しか知らないことばかり。ひどい人、と嘆きながらも恥じ入る姿も昔の六条御息所そのままです。

聞けば、夫婦の語らいの中で六条御息所を「扱いにくい、性格の悪い女」といったのが恨めしかったのだとか。死んだ後もこのように恨みを抱く六条御息所の姿には身震いを感じます。ようやく物の怪を封じ込め、紫の上をほかの場所に移して、人心地を得たのでした。

息を吹き返したとはいえ、紫の上はまだ病の床に伏したままです。光源氏はますます彼女のそばを去らず、看病に心を砕き、女三宮のいる六条院には、足を向けることも忘れていました。(次回に続く)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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