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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学37」 運命を変えた猫のいたずら(1)

Sazanami2s

■明石入道の物語

女三の宮の降嫁、光源氏の四十の賀など、お祝い事が続いた光源氏の一族に、もう一つおめでたいことが続きました。明石の君が生んだ娘は身分の高い紫の上に育てられた後、東宮に入内し女御になっていましたが、身ごもって里帰り中です。この当時、東宮は数え年15歳で中学生ぐらい。明石女御は13歳。いまなら、11歳10カ月程度ですから、ちょうど小学校6年生ぐらいです。さすがに当時としても幼いため、周囲の心配も一通りではありませんでした。

明石女御が出産したのは3月10日過ぎ。加持祈祷の甲斐があったのか安産で、健康な男の子が生まれました。時の権力者・光源氏の孫にして東宮の子。だれにも文句の付けられない身分の皇子の誕生です。おそらく次代の東宮はこの子でしょう。光源氏は帝の外戚という立場をも手に入れられる状況になりました。

明石女御が出産したことは、遠く離れた明石の入道にも知らされました。明石入道は明石の君とその母・尼君が都に上るとき、弟子たちとともに明石に残ったのでした。そのとき、おそらく尼君も入道も、今生の別れだとは思っていたでしょう。でも、手紙のやりとりができ、わずかながらもコミュニケーションがあったため、まだ救いがあったのかもしれません。

男児の誕生を知った明石入道から、明石の君に手紙が届けられました。そこには明石の君が生まれる前、入道が見た夢が書かれていました。一族から帝と皇后が出ることを暗示した夢です。その直後に母の胎内に宿ったのが、明石の君でした。大臣の子だったのに、受領に落ちぶれて明石に都落ちしていた入道でしたが、ただこのことだけをひと筋に願って生きてきたのでした。そのため、明石の君には高貴な人との結婚を望み、光源氏を婿にしたのです。

こうして心願が成就したいま、明石入道は草庵を出て山へ入ると手紙にはありました。それは世を捨てるだけではなく、命を捨てるという意味でもあります。いままでは遠く離れていても生きていてくれていたから、まだ安心感がありました。でも、この手紙は真の別れの手紙です。明石の君も尼君も涙の川に流されそう。もちろん、明石女御も光源氏もこの手紙を読み、女御はいままでぼんやりとしか知らなかった自分の出自を知りました。光源氏も自分が明石の君と結ばれた意味を知った思いでした。

この明石入道の手紙は、源氏物語の中でも胸に迫る場面の一つです。いままではちょっと道化的な存在でもあった明石入道はぐっと存在感を増して退場していきました。(次回に続く)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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