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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学35」40歳の光源氏に縁談が?(2)

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■嘆く紫の上、悔やむ光源氏

朱雀院は使者を使わし、光源氏に事情を伝えました。光源氏は「息子の夕霧などには似合いだろうけど、彼は試練を乗り越えてようやく結婚したばかりだからねぇ」などと使者に語ります。光源氏自身は特に自分の結婚問題のように取り上げていませんが、心の内ではある考えがぐるぐるぐるぐる巡っていました。

実は女三の宮は光源氏の初恋の人・藤壺中宮の姪に当たります。女三の宮のお母さんは藤壺女御という名前から分かるように藤壺中宮の姉妹、藤壺中宮に継いで美しいといわれた人でした。「きっと並大抵の人ではあるまい」光源氏の好奇心、というかスケベ心がむくむくと動きます。しかも、自分の妻たちの中には一人もいない内親王。藤壺中宮や六条御息所、朝顔斎院など身分の高い女性を求め続けた光源氏にはこれまた魅力でした。その後、出家した朱雀院を見舞った際、光源氏は女三の宮との結婚を正式に引き受けたのでした。

しかし、光源氏には一つどうにも気が重いことがありました。それは紫の上のこと。長年さまざまな苦労をかけて、ようやく落ち着いた矢先のことです。紫の上はこれから二人むつまじく暮らせると考えているに違いありません。そこへ降って湧いたような女三の宮の降嫁。並の身分の女であれば、問題はないのです。相手は内親王。しかも朱雀院の依頼で正式に降嫁するわけです。

ここで紫の上の結婚について思い出してみましょう。彼女は北山の寺で光源氏に見いだされ、略奪同然に光源氏の元に連れてこられました。そして14歳のあの日、光源氏は強引に肉体関係を結びました。つまり、親の許可を得ない結婚です。私は以前このエピソードをご紹介したとき「野合」と表現しました。ですから、紫の上はいままで妻達の中で一番重んじられており、「正妻格」としては扱われてきましたが、正式な「正妻」ではありませんでした。しかし、今度は内親王が正妻として光源氏に降嫁するのです。紫の上はいくら光源氏に愛されていても「その他大勢」の一人になってしまいます。

しかも紫の上は女三の宮の降嫁の噂は聞いていましたが、「そんなことはあるまい」と光源氏を信じていました。光源氏は「朱雀院の親心に打たれて、断ることができなかった」と結婚の事情を伝えます。紫の上は冷静に「お気の毒に。どうして不快に思うでしょう」と光源氏を許します。そのふるまいはとても穏やかです。でも、心の内には嵐が吹きあられていたことでしょう。いままで幸福を疑わなかったのに、これからはどんな屈辱が待っているのだろうか。紫の上の心は憂いに満ちていたことでしょう。

そして光源氏40歳の春2月。女三の宮は華々しく六條院に輿入れしました。贅を尽くした道具類が運び込まれ、迎える光源氏も準備万端怠りなく、盛大に儀式を行います。紫の上はこまごまと準備を手伝います.その間の、彼女の気持ちを思うとやるせなくなってきます。紫の上の結婚の時との差は歴然としています。

しかし、光源氏はまた違った点でがっくりしていました。初めて出会ったころの紫の上はわずか10歳でしたが、才気にあふれ、話をしても手応えがありました。しかし、女三の宮は全くの期待はずれ。確かにかわいらしい人ですが、体も小さく14歳とはいえ、まるで子どもです。ただただおっとりして子どもっぽいだけでした。こんな人のために、紫の上を嘆かせたのか…。後悔が満ち潮のように光源氏の胸を浸していきました。

結婚の初めでいきなり失敗に気づいてしまった光源氏。しかしもう後戻りはできません。女三宮と光源氏の関係は、そして紫の上との関係はどうなっていくのでしょうか。波乱の予感を感じさせながら、物語は続きます。(この項終わり) 

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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