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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学34」 亀裂の修復と光源氏の繁栄(2)

Fujitoike

■藤の宴の夜に

4月を迎え、物語は初夏を迎えました。藤の花の咲くころです。内大臣邸の藤もきれいに咲き誇る夕暮れ、内大臣の長男の柏木が夕霧に手紙を持ってきました。「わが宿の 藤の色濃きたそかれに 尋ねやは来ぬ春の名残を」という歌が藤の枝に付けられています。「我が家のきれいに咲いた藤の花を見に来ませんか?」といったような意味ですが、藤の花と、娘を見に来ませんか?という二重の意味が込められています。つまり、もう結婚を許します、といったようなニュアンスですね。

こんな手紙をもらった夕霧は内心オロオロ、心臓バクバク。こんなことはやっぱり、その道の達人のお父さんに聞かなければ。恋の手練れの光源氏は「いよいよ来たか」という気分でしょうか。「わざわざお使いを差し向けられたのだから、早く出かけなさい」と急がせます。さらに「きれいにして行きなさい」と自分の衣裳を夕霧に与えました。息子のおしゃれまで気遣う点はさすが光源氏です。

念入りにおめかしした夕霧が内大臣邸を訪れると、その息子たちが出迎えます。内大臣は夕霧の様子を見て「お父さんの光源氏より立派だね。光源氏は美しいけど、まじめそうには見えなかった。この人は学問の才能もあるし、男らしくしっかりしていると評判だ」と夕霧をほめます。藤の花の宴が始まり、酒が出されたり、音楽を楽しんだり、夜は更けていきます。

宴もたけなわとなり、夕霧がお酒を断るのに苦労しているころ、いよいよ話は本題に入ります。内大臣は「藤の花のせいにして許してしまおう。待ちすぎたけど」と雲居雁との結婚を許しました。内大臣という重い立場になると、なかなか自分の本音も話せないものです。お酒の勢いを借りる必要があったのかもしれませんね。夕霧も「少し酔っぱらって苦しくなってしまいました。無事に帰れる自信もないので、泊まる部屋を貸してください」と、酔いにかこつけて柏木に頼みます。奥歯に物の挟まったようなやりとりののち、柏木は夕霧を妹・雲居雁の部屋に案内しました。

何年ぶりの再会でしょう。別れのとき、少年と少女だった二人は成長した姿で対面しました。若い二人には初夏の夜は短すぎたようです。原文では「明くるも知らず顔なり」とあります。夜の明けるのも知らない風で朝寝していたというのです。さらに寝起きの顔を「ねくたれの御朝顔、見るかひありかし」と描写しています。寝乱れた朝の顔も見がいがあった、というわけです。二人の情熱的な一夜を想像させる一文ですね。

この物語が記された「藤裏葉」の巻は、源氏物語の第1部を締めくくる巻です。夕霧と雲居の雁の結婚に続き明石姫君の入内、光源氏が准太上天皇の位を得た話のあと冷泉帝と朱雀院の六條院行幸という晴れがましいエピソードで結ばれます。光源氏の栄華ここに極まれり。まさに藤原道長の「この世をば我が世ぞと思ふ望月の 欠けたることも なしと思へば」の世界です。

今回は特に失敗というお話ではありません。むしろ、過去の失敗を修復し、光源氏が栄華を極めたというお話ですね。特に失敗を上げるとすれば失敗の修復は思いのほか大変だということと、「新婚初夜に朝寝坊をしてはいけません」ということでしょうか。

それよりも、今後の展開に要注目です。繁栄は衰退するもの、満ちたものは欠けゆくもの。光源氏の運命にも変化が訪れます。お楽しみに!(この項終わり) 

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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