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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学34」 亀裂の修復と光源氏の繁栄(1)

■内大臣の迷い

前回お伝えした、玉鬘と髭黒の結婚、髭黒の前妻のご乱心から、1年半ほどが過ぎました。髭黒の前妻は子どもたちを連れて実家へ戻り、玉鬘は翌年男の子を産みました。さらに年が改まり、光源氏は39歳。もう立派なオッサンです。今回は再びその子ども世代に目を向けましょう。

光源氏は近ごろなにやら忙しげ。というのも明石の君との間に生まれた姫君が成長し、いよいよ東宮に入内する運びとなったため、その準備に奔走しているのです。紫の上や秋好中宮(六条御息所の娘)など、趣味のいい人達に練り香を作ってもらったり、書の名人に草子を作ってもらったり、立派な嫁入り道具をそろえようと躍起です。娘がやがて中宮となり、将来の帝の母となれば、光源氏の権力は絶大なものになります。東宮の心をとらえるためにも、いまから準備が必要です。当時の貴族にとって、娘は大事な大事な政治的持ち駒でした。

一方、この噂を聞いて落ち込んでいる人がいます。光源氏の親友だった内大臣、もとの頭中将です。この人は自分の娘が冷泉帝に入内していたのに、光源氏が秋好中宮を入内させたため、中宮の地位に付けることができませんでした。もう一人の娘・雲居雁を東宮妃にしようとしたところ、光源氏の息子の夕霧と恋仲になってしまい、それも叶わなくなってしまったのです。つまり、娘を使った栄達の道をことごとく妨げられた形です。それはおもしろくないでしょう。

さらに、雲居雁のことも気になります。夕霧との一見を知ったときには勢いに任せて二人の仲を裂いてしまいましたが、実のところちょっぴり悔やんでいたりします。雲居の雁はいまや美しい盛り。なのに縁談もなく、結婚もせず引きこもっている様子が不憫です。夕霧は家柄もよく、優秀な男子。トントン拍子に出世し、いまは宰相中将になって婿としても申し分ありません。誰かと結婚する様子もなく、かといって雲居雁に結婚を申し込む様子もなさそうです。噂では中務宮との縁談が持ち上がっている様子。内大臣は気が気ではなく、やはり折れてみるべきか…などと思いを巡らせているようです。

季節は巡り、春3月、内大臣は母・大宮の忌日に一族を引き連れ、極楽寺に参詣しました。極楽寺は伏見区深草にあったお寺です。光源氏にとっては亡き妻・葵の母であり、夕霧にとっては祖母に当たるため、知らん顔はできません。夕霧も参詣したほか、お経の供養などもさせました。夕方になり、春の終わりの風情と相まって、そこはかとなく寂しい風情が漂います。

内大臣は意を決して夕霧の袖を引きました。「どうしてあなたはそんなに怒っているのですか。きょうの仏様のご縁で、私の罪は許してください」などと夕霧に伝えます。身分の高い内大臣にこんな風に下手に出られては、さすがの夕霧も恐縮至極。「お許しのないご様子に遠慮しておりました」と答えます。しかし、話はそれ以上進まず、夕霧は中途半端な気持を抱えたまま、過ごすことになりました。(次回に続く)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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