« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »

2009年2月

「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学30」 豪華絢爛 六條院のお正月(2)

Hakubai3

■新年早々、外泊ですか?

さて、春とはいえ、まだ日が短い時期のこと。そろそろ日も暮れようとしています。明石の君の部屋へ来ると、御簾からかぐわしい風が漂い、どことなく優美に感じられます。ほかの女性たちに比べると、身分の低い明石の君ですが、たしなみは都の貴女並みです。

硯の周りには趣味の良い本がさりげなく投げ出され、敷物はインポートもののきれいなもの。そばには風情のある琴が置かれています。あたりに散っている紙に書かれた手習いの文字も美しく、本人の教養をうかがわせます。火桶にくゆらせているのは「侍従」というお香。まるで貴族のようなインテリアですが、このお香を焚くことで、自分の出自は忘れていないことを示しています。

本文には書かれていませんが、このように手習いや本を置いていたのは、明石の君の演出だと考えられます。自分の趣味のよさ、教養を光源氏にアピールするいいチャンスだと考えたのでしょうか。光源氏が手習いを手に取り、自分でも少し何か書き付けているときに、明石の君がそっと膝行り出てきました。膝行り出るという行為には、光源氏を主君とし、礼を尽くしている態度が現れています。このあたりが明石の君の賢さ、謙虚さなのでしょう。

さて、今日の明石の君はいつもにも増して美しく見えます。今日の着物は白地の小袿。これは年末に光源氏が贈ったものです。重ねているのは濃い赤紫。趣味のよいコーディネートは光源氏の見立てです。紫の上はこの組み合わせを見てそれを着る人を想像し、密かに嫉妬の炎を燃やしたのでした。

実際、この着物は明石の君にとてもよく似合っていました。その優美な様子に、光源氏の心が動きます。新年第一日目ですが、光源氏は明石の君の元に泊まることにしました。つまり、ことしの○初めは明石の君と、ということです。

でも、春の町では紫の上が光源氏の帰りを待っています。こちらに泊まることにしながらも、紫の上の顔がちらつき「新年早々騒がれることになるかもな」と思います。それでも、明石の君の魅力にはあらがえないのでした。

事実、その頃紫の上は「やっぱり明石の上に対する寵愛は格別なのね」とまた、嫉妬の炎を燃やし、主人を思う紫の上の女房たちは、「なんてひどい男君!」と歯がみします。そんな春の町の様子が目に浮かび、光源氏はまだ朝早く、暗いうちに春の町に戻りました。まだ一緒にいられると思っていたのに、早々と立ち去られた明石の君も、中途半端な思いが残り、寂しさがつのります。あちらへもこちらへも罪作りな光源氏です。

おもしろいのは光源氏の言い訳。「ちょっとうたた寝をして、若い人みたいにいぎたなく寝込んでしまったよ。起こしてくれなかったんだね」と紫の上の機嫌をとります。でも、紫の上はそれも無視。光源氏は居心地が悪く、狸寝入りをして、日が高くなってから起き出したのでした。新年早々、女がらみでやっかいな六條院の1日でした。

新年早々、自分の気持ちに負けて明石の君のもとに泊まってしまった光源氏。同じ邸の中ですが、紫の上にとってはこれは外泊。その後のトラブルを考えると、やっぱりこれは光源氏の失敗ですね。いくら恋人が魅力的でも、新年ぐらいは妻のもとに返った方がいいですよ、という教訓でしょうか。(この項終わり)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

※ただいま若葉マークの源氏物語ブログ別館「千年前から恋してる!」公開中。光源氏編、いよいよ最終章へ!
アクセスはこちらから  http://wakabagenji.cocolog-nifty.com/sennenlove/

あなたの応援待ってます。クリックしてね!↓
◇人気ブログランキング◇へ

| | コメント (0)

「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学30」 豪華絢爛 六條院のお正月(1)

■光源氏、新春のあいさつに女たちを訪れる   

今回はちょっと趣向を変えて、光源氏の大邸宅、六條院のお正月をレポートしましょう。元日の朝、よく晴れた六條院には春の気配が漂います。女たちはみんな、光源氏から年末に配られた新しい衣装を着て、それぞれに新しい年を言祝いでいました。

中でも華やぎ、この世の極楽浄土のような風情をかもし出しているのが紫の上の「春の町」。女房たちはお正月の歯固めを行ったり、鏡餅を取り寄せたりして、新年を祝っています.歯固めとは、長寿を願ってする儀式。おとそを供するときに猪肉や鹿肉、大根、瓜、鮎などを並べて食します。光源氏もそこを訪れ、一緒にお祝いします。

同じ春の町には明石の君が生んだ姫君も住んでいます。こちらの部屋ではかわいらしい童女や女房たちが、庭の築山の子松を引いて遊んでいます。これは長寿を祈るもので、やはりお正月にふさわしい遊びです。部屋の中には明石姫君の実母、明石の君からの届け物。そこには「年月をまつに引かれて経る(ふる)人に 今日鶯の初音聞かせよ」という歌が付けられています。光源氏が返事を書くよう進めると、素直に墨をする姫君の姿がまたかわいらしいのでした。

次に訪れたのは花散里の夏の御殿。こちらはとても静かな雰囲気です。花散里とはもう、何となく老夫婦のような枯れた雰囲気。心が通い合う様は長年連れ添った夫婦らしさがありますが、実のところもう、肉体的な交渉はなさそうです。「今は、あながちに近やかなる御ありさまも、もてなしきこえたまはざりけり」と原文にはありますが、紫式部には珍しく、男女の性について結構はっきりと述べています。

花散里は、女としてももう下り坂。衣装の色合いも地味
だし、化粧っ気もあんまりありません。髪の毛はすっかり少なくなって貧弱です。光源氏は「私でなかったら、もう愛想を尽かすかも」と思っています。そんなになっても光源氏を信頼している心がうれしいと考えています。

次にやってきたのは、同じ夏の町の西の対に住む玉鬘のところ。年末に送った山吹重ねの着物がよく似合い、美しい様子を見ると、光源氏は「このままではいられないかも知れない」と自分の心をのぞき込みます。すでに玉鬘への恋心が芽生えているのでしょう。かろうじて自分の心を抑制しながら、光源氏は親らしくふるまい、明石の姫君が琴を習うので、一緒に稽古しなさい、などといいおいて、冬の町の明石の君の元へ急ぐのでした。(次回に続く)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

※ただいま若葉マークの源氏物語ブログ別館「千年前から恋してる!」公開中。光源氏編、いよいよ最終章へ!
アクセスはこちらから  http://wakabagenji.cocolog-nifty.com/sennenlove/

あなたの応援待ってます。クリックしてね!↓
◇人気ブログランキング◇へ


Hakubai2jpg

| | コメント (0)

« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »