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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学30」 豪華絢爛 六條院のお正月(1)

■光源氏、新春のあいさつに女たちを訪れる   

今回はちょっと趣向を変えて、光源氏の大邸宅、六條院のお正月をレポートしましょう。元日の朝、よく晴れた六條院には春の気配が漂います。女たちはみんな、光源氏から年末に配られた新しい衣装を着て、それぞれに新しい年を言祝いでいました。

中でも華やぎ、この世の極楽浄土のような風情をかもし出しているのが紫の上の「春の町」。女房たちはお正月の歯固めを行ったり、鏡餅を取り寄せたりして、新年を祝っています.歯固めとは、長寿を願ってする儀式。おとそを供するときに猪肉や鹿肉、大根、瓜、鮎などを並べて食します。光源氏もそこを訪れ、一緒にお祝いします。

同じ春の町には明石の君が生んだ姫君も住んでいます。こちらの部屋ではかわいらしい童女や女房たちが、庭の築山の子松を引いて遊んでいます。これは長寿を祈るもので、やはりお正月にふさわしい遊びです。部屋の中には明石姫君の実母、明石の君からの届け物。そこには「年月をまつに引かれて経る(ふる)人に 今日鶯の初音聞かせよ」という歌が付けられています。光源氏が返事を書くよう進めると、素直に墨をする姫君の姿がまたかわいらしいのでした。

次に訪れたのは花散里の夏の御殿。こちらはとても静かな雰囲気です。花散里とはもう、何となく老夫婦のような枯れた雰囲気。心が通い合う様は長年連れ添った夫婦らしさがありますが、実のところもう、肉体的な交渉はなさそうです。「今は、あながちに近やかなる御ありさまも、もてなしきこえたまはざりけり」と原文にはありますが、紫式部には珍しく、男女の性について結構はっきりと述べています。

花散里は、女としてももう下り坂。衣装の色合いも地味
だし、化粧っ気もあんまりありません。髪の毛はすっかり少なくなって貧弱です。光源氏は「私でなかったら、もう愛想を尽かすかも」と思っています。そんなになっても光源氏を信頼している心がうれしいと考えています。

次にやってきたのは、同じ夏の町の西の対に住む玉鬘のところ。年末に送った山吹重ねの着物がよく似合い、美しい様子を見ると、光源氏は「このままではいられないかも知れない」と自分の心をのぞき込みます。すでに玉鬘への恋心が芽生えているのでしょう。かろうじて自分の心を抑制しながら、光源氏は親らしくふるまい、明石の姫君が琴を習うので、一緒に稽古しなさい、などといいおいて、冬の町の明石の君の元へ急ぐのでした。(次回に続く)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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