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源氏物語の登場人物2 弘徽殿大后

Koubai

源氏物語は多数の女性が登場する。六条御息所が好きな人、明石の君が好きな人、朧月夜の君が好きな人・・・と、それぞれ好みが別れるところだ。でも、たぶんこの人はだれも好きっていわないんじゃないか、という人がいる。

それが弘徽殿大后。何てったって源氏物語最強の敵役だ。桐壺いじめの首謀者にして、光源氏最大の政敵。光源氏が須磨に退いたのも、この人の力を恐れたがためだ。自分の息子は傀儡にする。父親の右大臣だって、彼女には恐れをなすほどの女傑。そんなエピソードにも事欠かない。例えば、光源氏と朧月夜の密会が露顕した夜のことを思い出してみよう。

瘧病で右大臣邸に里下がりしていた朧月夜は光源氏と密会を重ねていた。恐ろしいことにその邸には弘徽殿大后も住んでいる。若さゆえか、怖いもの知らずの二人だ。ところが激しい雷雨の未明、二人のデートはあえなく右大臣に見つかってしまう。右大臣は短慮な人で、これをすぐさま弘徽殿大后に報告した。そのときの彼女の怒りのすさまじいこと。右大臣をして「何で話してしまったんだろう」と後悔させるほどだったという。

このエピソード一つでも、弘徽殿大后の激しさが分かる。そう、彼女は源氏物語の登場人物には珍しく、感情をあらわにする人なのだ。だが、決してお育ちが悪いわけではない。なんといっても右大臣家のお嬢様(ちょっと古くなっているが)なのだ。妹の朧月夜が美しい人だというなら、彼女だっておそらく桐壺帝に入内したころは美人だったに違いない。もちろん、教養だって十分だ。

例えば須磨の巻で、彼女は「 朝廷の勘事なる人は、心に任せて この世のあぢはひをだに知ること難うこそあなれ。おもしろき家居して、世の中を誹りもどきて、 かの鹿を馬と言ひけむ人のひがめるやうに追従する」と述べている。「鹿を馬と言いけむ」というのは中国の故事にある話。ここから、彼女は漢籍の教養もあったとことが分かる。それを隠さないのが弘徽殿さんらしいところだ。

だが、私は彼女が嫌いではない。光源氏に厭味をいったり、桐壺をいじめたり、ということはあるが、何というか源氏物語の中ではとても陽性でわかりやすい人。怒らすと怖いが、お友だちになったら、結構楽しいかもしれない。

それに彼女は、光源氏が大好きだったのかもしれない。かわいいかわいい光源氏。こちらまで思わずほほえんでしまいそうな、美しくかわいらしいほほえみ。だけど、桐壺の産んだ子。自分のものにはならない子。だからかわいさ余って憎さ百倍。辛く当たったり、時には陥れるような仕打ちに走ったのではないだろうか。

とまれ、源氏物語は彼女の存在抜きには成立しない。桐壺の死も、光源氏の須磨退去も、藤壺の出家も、弘徽殿大后がいてこそだ。時には彼女にも目を向けてほしい。

※ただいま若葉マークの源氏物語ブログ別館「千年前から恋してる!」公開中。物語は現在「若菜下」の巻です。物語はいよいよ佳境に入ってきました。
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