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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学27」 親の考えに振り回される子どもたち(2)

Nadeshiko_2

写真はなでしこの花。雲居雁って、こんな感じの女の子だったかも。

■少年と少女の恋に「待った!」

で、この息子さん、夕霧君はおばあちゃんの大宮のもとで育ちましたが、一緒に育った従姉妹で内大臣(もと頭中将)の娘の雲居雁(くもいのかり)というお嬢さんといつの間にか恋人同士になっていました。幼さの残る年ごろですが、おませだったのでしょうか。父の内大臣はまだそれを知りません。

内大臣には冷泉帝に入内させた弘徽殿女御という娘がいました(あの弘徽殿大后とは別人です)。なんとか中宮にと考えていたのですが、結局光源氏が入内させた六条御息所の娘が中宮になり、内大臣はがっかりです.そこで次の手として、雲居雁を春宮に入内させようと考えつきました。

そこである日、内大臣は大宮の元を訪れました。雲居雁や大宮と楽器を演奏し、甥の夕霧とも対面してさらに管弦の遊びに興じます。ただ、このときには雲居雁は別の部屋に帰されてしまいました。夕霧には琴の音さえ聞かせないようにという配慮です。内大臣は雲居雁と夕霧の仲をまだ知らないので、恋人同士でもないのにそんなことをしてはいけないと二人を引き離したのでした。

さて、管弦のひとときも終わり、内大臣は帰る「ふり」をしました。実はこっそりこの邸の女房とねんごろになっていて、きょうはそこを訪れようという算段。首尾よく女房の部屋に行き、逢瀬を終えて出ていこうとします。

ここの表現がおもしろいのですが「 やをらかい細りて出でたまふ」すなわち、こそっと身を細めて出ていく、というのです。内大臣のように身分の高い人が、こそこそ身を潜めながら廊下を歩いていくようすが目に浮かんで、ちょっと笑いたくなります。

ところが!どこかの部屋から「夕霧」とか「雲居雁のお嬢さん」とか話している女房たちの声が聞こえてきます。内大臣も人の親ですから「なんの話だ?」と聞き耳を立ててしまいます。日本の家屋は木と紙でできた家。女房らの話は筒抜けです。どうやら春宮に入内させようと思っていた雲居雁が光源氏の息子の夕霧と恋人同士になってしまった様子。「これでは入内させられないじゃないかぁああ!」と内大臣の心の叫びが聞こえそうです。

さらに追い打ちをかけるように女房たちの声。「えらそうにしているけど、やっぱり親って甘いわよね。知らない間にとんでもないことになってんだから」「親は子どものことを知ってるっていうけど、そんなのウソよねぇ」などと、自分をバカにする声。内大臣はことの仔細を悟ってしまいました。こんな時、普通の人なら怒りで膝も震えそうですが、音も立てずにそっと出ていったのはさすがです。

そのあと、内大臣のお供の声が女房たちのところまで響いてきました。「聞かれちゃったかも!」彼女らはたぶん真っ青になったでしょうね。いまでいえば、会社の給湯室かトイレで上司の悪口を言っていたら、上司がそれを聞いていた、みたいなシチュエーションでしょうか。

内大臣は考えた末、娘を自邸に引き取ることに決めました。これで夕霧と雲居雁の仲は引き裂かれてしまいました。お互いに思い合う少年と少女の胸は張り裂けそう。二人を不憫に思った夕霧の乳母がこっそり対面させますが、二人とも涙に暮れるばかりでした。

さらに夕霧の失意に追い打ちをかけたのが雲居雁の乳母のことば。「いくらお生まれがよくても、最初の男性が六位風情ではねぇ」。意地悪なことばですね。柔らかい少年の心にはぐさりと突き刺さります。そうこうしている間にも内大臣がやってきます。夕霧は後ろ髪を引かれながら、雲居雁のもとから去らなければいけませんでした。

今回の主人公・夕霧君は、登場早々がっくりくることばかりです。社会人生活のはじめが六位だったり、恋人と引き裂かれたり。親はよかれと思っていることですが、本人はそのせいで泣いたりうちひしがれたり大変です。ということで、きょうは「子どもって親の考えに振り回されるよね」というお話。それから、うわさ話は相手に聞かれないようにしましょうね。

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。
※ただいま若葉マークの源氏物語ブログ別館「千年前から恋してる!」公開中。物語は玉鬘の巻です。
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