「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学26」身から出た錆だらけの光源氏(2)
■秘密の恋を漏らした恨み
結局、朝顔の姫君は光源氏を拒み、光源氏は腹立たしくて二条院にも戻らない日が続きました。紫の上は思い乱れるばかりです。久しぶりに光源氏の顔を見るとほろほろと涙がこぼれてしまいました。光源氏は紫の上の髪をやさしくかきあげますが、出てくるのは言い訳ばかり。
「藤壺宮がなくなって、帝が寂しそうにしている上、太政大臣もなくなって仕事が忙しかったんだよ。朝顔の姫君のこと?とりとめもない手紙を出しているだけじゃないですか。寂しいときに手紙を出すと、時々お返事をくれるんだよ。そんなこと、いちいち君に話す必要もないし。心配しなくていいよ」
こんなことを言われて、紫の上が信じられるでしょうか。だけど、この会話に紫の上と光源氏の関係の変化が見られるのです。それまでは紫の上はあくまで藤壺の「代わり」でした。でも、藤壺が亡くなったことで、紫の上は事実上、光源氏の第一の人になったです。ある種宙ぶらりんだった紫の上は、きちんと収まるべきところに収まったともいえるでしょう。
さて、その夜、光源氏たちは庭に雪が降り積もったので女童たちに庭で雪玉を作らせます。雪は結構積もったようで、大きな雪玉は女童たちには転がしきれなくなっているとも書かれています。最近の京都ではそれほど雪が積もることもありませんが、昔はそういうことも多かったのでしょうか。
それを見ながら光源氏は紫の上にいままでに出会った女性の話を漏らしました。藤壺については「この世にあれほどの方がいるんだろうか、という感じだね。柔らかだけど、品がよくて。君はよく似ているけど、ちょっと気が強くてやきもち焼きなところが困るかな」などといいます。そのほか、朝顔の姫君や、朧月夜、明石の君、花散里などについてもそれぞれ話が出ました。
夜も更けて光源氏と紫の上は床につきました。紫の上が隣にいながら、光源氏の胸に浮かぶのは藤壺のこと。少しうとうとしたころでしょうか。夢に藤壺の姿が現れました。その様子はひどく恨めしげです。「二人のことは誰にもいわないといったはずなのに、浮き名が流れて私は恥ずかしく、苦しい目にあって辛い思いをしています」
これってまるで「恨めしや」の幽霊ですね。藤壺は光源氏が紫の上に過去の女性の話をしたことを恨んで出てきたのでした。うなされていたのか、紫の上に起こされた光源氏はわずかに見た藤壺の面影が忘れられず、悲しみでいっぱいです。しかし藤壺のために法会を行うと、世間が怪しむかもしれません。一人心に阿弥陀仏を思い浮かべて供養の祈りを捧げるのでした。
朝顔の斎院にふられ、紫の上の嫉妬を買い、藤壺に恨まれた今回のテーマは「身から出た錆」でしょうか。いずれも光源氏のいままでの行いが巻き起こしたことばかりです。そういえば、あの光源氏に言い寄った老婆・源典侍は70を過ぎたいまも健在で、しかも朝顔の姫君の叔母に仕えていました。朝顔の姫君邸で光源氏に再会した源典侍は、歯のない口で笑い、光源氏に甘えかかってきます。光源氏はぞっとしてそそくさと立ち去りました。これも若いときの戯れが招いたこと。身から出た錆のひとつですね。(この項終わり)
写真は大原・三千院の庭
※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。
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コメント
千年紀からリンクして来ました。
華やかで楽しい writing に、思わず惹き込まれ…。
ただ、最初の「あらすじ」が全部、「sorry」と出て来て、
残念だったなぁ・・・。
そうそ、私は今、「源氏物語歌集」に毎日一首、
取り組んでいます(goo で)。
投稿: 悠山人 | 2008年8月19日 (火) 10時59分