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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学24」 彼は意外に恐妻家?(2)

■言い訳に悩む光源氏
明石の君一行は、こうして大堰山荘へ移り住みました。明石の海辺に似た、風情豊かな住まいですが、明石の君は明石のくらしを思い出して切なくなるときもありました。こんな時、光源氏がそばにいてくれたらどんなに心強いでしょう。でも、光源氏は訪ねてくれません。都へ着いたらすぐ出迎えてくれてもよさそうなのに、なぜ彼は来てくれないのでしょう。光源氏の形見の琴をつま弾きながら、明石の君は物思いに沈むのでした。

光源氏だって、明石の君や娘に会いたくないわけではありません。何とか訪れようとするのですが、さすがに内大臣という重い身分。かつてのように軽々しく夜歩きはできないう上に大堰はちょっと距離があります。それに何より気になるのは紫の上のこと。紫の上は明石の君が上京したことをまだはっきりとは知らないのです。「ほかのルートから聞かされると、気まずくなるよなぁ」と思案する光源氏。何とかうまい口実はないものかと考えて紫の上に告げました。

「いま桂に造っている別荘なんだけどさ、ちょっと様子を見に行こうと思うんだ。それに『上京したら訪ねるよ』って約束した人もその近くに来ていて待ってるらしいんだよね。せっかく来ているのに、行かないのも何だしさ。そうそう、嵯峨野の御堂の仏様のところも立ち寄らなければいけないから、二、三日留守になりそうなんだ」

この、用事と用事の間にさりげなく本題をはさむところが、いかにも恐る恐るのご機嫌伺い、という雰囲気ですね。これを聞いた紫の上は「桂に別荘を造っているのは知ってたけど、それって女の人を住まわせるつもりだったんだわ」とピンと来ます。それが明石の君だと気づいたかどうかは書かれていませんが、おそらく感づいていたことでしょう。「斧の柄さへ改めたまはむほどや、待ち遠に」と紫の上は返事を返します。

これは「仙人の碁を観ている間に時間が経って、きこりの斧の柄が朽ちていた」という故事に基づいた返事です。つまり「きっと帰るまでに時間がかかるんでしょうね」という紫の上の皮肉です。どうも彼女はご機嫌斜めです。光源氏はすっかり困ってしまいました。

「これは異なこと。世間じゃ私のことをもう昔みたいな女たらしじゃなくなったっていってるのに」と必死に弁解します。結局この日は紫の上のご機嫌を取り結ぶのに、時間がかかってすっかり日が高くなってしまった、とあります。

このやりとり、何気なく描かれていますが、光源氏って意外に恐妻家だったのかな、と思います。朧月夜をナンパしたときには「ぼくは何をしたって許されるんだから」とうそぶいていた光源氏ですが、紫の上相手にはそうはいかないようです。こんなところに意外な人間くさい一面が現れていて、源氏物語っておもしろいな、と思ったりします。

今回は失敗、とまではいきませんが、意外に恐妻家の光源氏の一面をお伝えしたいと思い、このエピソードを取り上げてみました。(この項終わり)

Seiryouji

写真は嵯峨釈迦堂(清涼寺)本堂

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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