« 模様替えしました! | トップページ | 京都御所シリーズ5 蹴鞠の庭 »

「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学23」 思い人を奪われ続ける男(2)

Gosho_sakura_2
京都御所の八重桜 朧月夜ってこんな感じの人かも


■朱雀院の悲しみと落胆
ここで朱雀院という人の人生を振り返ってみたいと思います。彼は桐壺帝の一の皇子。母は弘徽殿大后です。母の身分も高く、本来であれば桐壺帝から特別目をかけてもらえるはずの立場ですが、幼少のころから父・桐壺帝の目は弟の光源氏に向けられていました。いわば父の愛情を奪われた形です。

そして結婚。光源氏の最初の妻になった葵の上は、本来朱雀院のお后になる予定で育てられた娘でした。でも、桐壺帝と葵の上の父・左大臣は葵の上を光源氏の妻にしたのです。ここでも朱雀院は自分のものになるはずだった人を奪われてしまったのでした。

そして極めつけは朧月夜の君。彼女は朱雀院のお后として入内することが決まっていましたが、桜の美しい春の夜、光源氏と偶然に出会って恋に落ちてしまいます。光源氏との恋が表沙汰になったあと、彼女の姉、弘徽殿大后や父の右大臣は女官として宮中に送り込みました。彼女は朱雀院の寵愛を受けますが、朱雀院はいわば「キズモノ」、光源氏の「お古」をつかまされてしまいました。

しかも、宮中に上がってからも光源氏と朧月夜の恋は続きます。ある時は朱雀院が物忌みで謹慎している最中の宮中で、ある時は病気で里邸に戻っているときに、二人はこっそり忍び会っていました。これを知った朱雀院の気持ちを思うと、気の毒になってきます。

こうした経緯があったあとの、前斎宮の入内です。光源氏は再び、朱雀院の思い人を奪いさり、今度は自分の息子に与えてしまったのです。皇位を退き、自由の身になった朱雀院は、今度こそ愛しい人と穏やかに過ごしたいと考えていたに違いありません。しかし、目の前でその思いは断ち切られたのです。どれほど落胆したことでしょう。

でも、朱雀院は大人でした。前斎宮の入内当日、朱雀院は装束や櫛、香壺などすばらしいプレゼントを贈ります。添えられた手紙を見てさすがの光源氏も胸を痛めるのでした。

思い人を奪われ続けた朱雀院の物語はいったんここで終わりを告げるかのように見えます。しかし、朱雀院はその後、光源氏の人生に思いもよらぬ波紋を投げかけることになります。自分の愛娘、女三の宮を光源氏の妻として降嫁させたのです。もはや晩年に近づいた男に、親子ほども年の離れた愛娘を嫁がせた朱雀院の真意は何だったのでしょうか。

源氏物語を英訳したロイヤル・タイラー氏はこれを「思い人をことごとく弟に奪われた兄の復讐」だと位置づけています。たしかに、女三の宮の降嫁後、女三の宮の密通や不義の子の誕生、紫の上の死など光源氏の運命が大きく狂うことを考えると、それは復讐だったのかもしれません。

となると、光源氏は図らずも朱雀院の人生に復讐の種をまき続けてきたことになります。それは光源氏が意図したことではありませんが、後の人生に大きな影響を与える失敗だったのかもしれません。そのお話はもう少し先のことになります。(この項終わり)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

あなたの応援が更新の励みになります。よかったらクリックしてね!↓
◇人気ブログランキング◇へ

|

« 模様替えしました! | トップページ | 京都御所シリーズ5 蹴鞠の庭 »

古典文学」カテゴリの記事

源氏物語」カテゴリの記事

源氏物語の失敗学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 模様替えしました! | トップページ | 京都御所シリーズ5 蹴鞠の庭 »