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「源氏かおり抄の世界」展 〜香りで綴る源氏物語〜

Sugimotoke

源氏物語と香りは切っても切り離せない関係にある。物語の随所で香りは大きな役割を果たす。夜の闇がいまよりも濃かった時代、人々は香りで人を区別していたのかもしれない。例えば、空蝉は自分の寝所に忍んできた人物を、香りで光源氏と判断したわけだし、光源氏は膝行りでてきた末摘花の香りに「さすがは高貴の姫君」と納得している。

また、物語では香りの使い方でその人物や集団の性格を表現している部分もある。例えば「花宴」の巻では、薫き物が煙いほどにたかれていて、女たちが衣擦れの音をさせながら起ち居する右大臣邸の様子を「奥まりたるけはひたちおくれ、今めかしきことを好みたる」と批判的に描いている。「鈴虫」の女三の宮の持仏開眼供養の場面でも同様のことが描かれている。

香りへのこだわりは「梅枝」の巻にもよくあらわれている。ここでは薫き物合わせの様子から、その種類まで書かれており、平安時代の香りを知るよすがとなっている。そして極めつけは自分自身がかぐわしい香りを放つ、薫と薫に対抗してよいお香を焚きしめている匂宮の二人。この二人は光源氏のように「光る」ほど美しくはないけれど、香ったり、匂ったりする程度には美しいのである。

そのほかにも香りが登場するシーンは数多い。ことほど左様に源氏物語と香りは切り離すことのできないものなのである。

その源氏物語五十四帖の世界を、様々な香りや形で表現したのが「源氏かおり抄の世界」展〜香りで綴る源氏物語〜。お香の老舗「松栄堂」が源氏物語千年紀を記念して開催しているもの。各帖を香りやその使い方、容器などで表現する。例えば、花宴であれば、桜模様の匂い箱に香を入れる、須磨であれば海の風物を描いた貝桶に貝の形の匂い袋を入れるといった感じ。と書いてもとても伝わりにくいと思う。これはぜひ現地で見ていただきたい。

会場は築100年を超える町家「杉本家住宅」。室内にはほのかな薫き物の香りが漂う。あるかないかのかすかな香りは、オープンな作りの日本家屋だから似合うのかもしれない。機密性の高いマンションでは、加減を間違えると右大臣家のようになってしまうだろう。展示のほか、聞香も体験できる。やわらかな伽羅の香りは奥ゆかしさに満ちている。

もちろん、会場の住宅そのものにも目を向けてほしい。これは伝統的な町家として京都指定の有形文化財にもなっている。どっしりと黒光りする柱、苔むした庭、荘厳な仏間、どこを見ても堂々たる風格が漂う。杉本家は呉服商奈良屋を営んでいた。そのため、入り口を入った左右には店の間がふたつ向かい合っている。今回展示に使われた座敷は12室。どこまで部屋が続いているのかと思うぐらい広い家屋だ。さらにその奥には、今回は公開されていない土蔵や漬物小屋もある。おくどさんのある台所は一間幅で十二畳分。太い梁や柱に目を見張る。また、同家は祇園祭の際、伯牙山のお飾り場として店の間に屏風や祭りに使われる懸装品が飾られる。京の町衆の伝統を伝える京町家なのである。

源氏物語を香りで表現する展示や聞香体験も目新しく、楽しいものだが、風格漂う京町家の内部を目にすることは少なく、貴重なチャンスだ。開催は3月23日まで。残りあと2日だが、もし機会があれば足を運んでほしい。

■松栄堂 
■杉本家住宅 

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