« 2008年2月 | トップページ | 2008年4月 »

2008年3月

京都人形三昧 番外編 愛でたきもの 雛とミニチュアのお道具展 −ミニチュアで織りなす『源氏物語』の世界−

豪華な雛飾りの魅力は、お内裏様だけではなく、そのお道具にもあると私は思う。お膳やお重、鏡台、違い棚など、一つひとつ塗も模様もきちんと施されたおひな様のお道具は、おもちゃなどではなく、立派な工芸品だ。その小さなお道具だけで、ひとつの世界を完成していることに驚く。

京都・百万遍にある思文閣美術館では4月6日まで「愛でたきもの 雛とミニチュアのお道具展 ミニチュアで織りなす『源氏物語』の世界」を開催中だ。

おひな様のお道具がお膳や家具調度に始まり、楽器、装身具など多岐にわたってそろっている。小さな琴や琵琶はいまにも音楽を奏でそうだ。貝合わせは通常蛤で作られるが、おひな様用は小さなシジミを使う。一つひとつに金泥で彩色が施されている。貝桶も金蒔絵がきれいだ。

中でも目を見張るのが台所道具と食器類。関西の雛飾りのお道具だが、お茶碗やお椀、湯飲み、急須など、そのまま所帯が持てそうなぐらいの品揃え。水屋にもきちんと道具が収まり、機能的に見える。ここで腕まくりをして立ち働くおひな様の姿を想像して、ちょっとおかしくなった。ほかにも源氏物語の豆本や源氏物語蒔絵小箱、源氏物語図絵印籠など源氏物語千年紀にちなんだ展示も。

そこで「夢浮橋」の絵を見ていた女性、「薫さんってモテないわよねぇ」とひと言。やっぱりみんなそう思ってるんだ。


Shibunkaku

■思文閣美術館

| | コメント (0)

京都人形三昧その3 京都国立博物館&京都文化博物館

写真は京都文化博物館Kyoubun

ひな人形やそのお道具というものは、なぜか私の心を惹きつける。桃の節句を祝う必要がなくなっても、やっぱりひな飾りには目を奪われる。おそらく、現実にはあり得ないサイズの道具が、非現実の世界へ誘うからだろう。京都国立博物館で行われた特集陳列「雛まつりとお人形」、京都文化博物館のコレクション展「池大雅と雛人形」は、おひな様や人形の数々に現実を忘れるひとときだった。

京都文化博物館はおひな様を年代順に近世まで展示。おひな様の作りや顔、飾り方の変遷がよくわかる展示だった。京都国立博物館も同様だが、さらに嵯峨人形や御所人形、衣装人形など幅広く展示されていた。また、人形の背景に使っている屏風や襖絵が重文だったりするのは、さすが国立の博物館。人形に気を取られているとうっかり見落としてしまいそうだが、そんなところにも目をひかれる展示だった。

おひな様の原形は3月の上巳の節句にからだをなでて穢れやわざわいを移し、川などに流す「形代」。これは古墳時代から作られており、木や草で作られたものだった。それが幼子の健やかな成長を祈る天児(あまがつ)や這子(ほうこ)となり、さらに二つ一組になって、立ち雛や紙雛が生まれた。ようやくここに来て男女一対だ。形代を原形とした立ち雛はその後もあまり形を変えずに現代に受け継がれている。

一方、いまよく見かけるお内裏様とおひな様の座り雛は、立ち雛とは系統が異なる。こちらは寛永年間(17世紀前半)ごろから作られるようになったようだ。寛永雛と呼ばれるおひな様はまだ頭髪も塗でポーズも何となくぎこちない。元禄年間に作られるようになった元禄雛は女雛に手先が付き、装束も十二単風で豪華になってくる。

享保年間(1716〜1735)に流行したのが享保雛。高さ50センチぐらいの大ぶりなおひな様は髪が植えられ、男雛は冠をかぶり、衣冠束帯を身につけて太刀を差し、笏を手に持つ。女雛は豪華な冠にボリュームのある十二単を付けている。顔も写実的で、瓜実顔の美男美女に作られている。目が笑っているようで、じっと見つめていると笑い声まで聞こえそうで、実のところちょっぴり怖い。

次に流行したのが次郎左衛門雛。これはまん丸な顔に引目かぎ鼻で可愛らしい。京都の人形師の雛屋次郎左衛門が作り始めたとされることからこう呼ばれる。一方江戸では18世紀後半に古今雛が作られた。こちらは瓜実顔で、いまの雛人形もこの系統を受け継いでいる。また、公家社会では有職の作法に従って忠実に再現された有職雛が作られた。装束によって束帯雛や直衣雛、狩衣雛などが作られた。

京都国立博物館ではこうした歴代の雛に加え、明治時代に造られた軍装の雛飾りも展示。これは軍服姿の明治天皇をモデルにしたと思われる雛人形で、一番手前には馬車に乗った親王の姿も見られる珍しいもの。随身なども洋装で、当時の式典の様子をよく伝えている。

内裏雛の左右やお道具が東西で異なるのは宝鏡寺の項でお伝えしたが、そのほか、関西では「御殿飾り」という飾り方がある。関東では5段、7段などの豪華な段飾りが主流だが、関西では内裏雛の住まいである御殿を最上段に置き、奥に内裏雛、その前に官女などを置く。お道具は関東ほど豪華ではなく、おくどさんや水屋などが飾られるのは既述の通りである。現在はほとんど飾られることはない。今回、京都文化博物館では、大正時代の豪華な御殿雛飾りが展示されていた。そのほか、源氏枠という飾り方もある。こちらは屋根のない御殿飾りのようなもので、源氏物語絵巻の構図のように上からも雛を眺めることができるため、こう呼ばれる。

なお、期間は京都国立博物館が3月30日、京都文化博物館が4月13日まで。おひな様の時期なんて過ぎてしまったと思わないで。4月8日は旧暦の桃の節句。ことしはもう一度、ひな祭りを楽しんではいかがだろう。


Kyouhaku

こちらは京都国立博物館の旧館とロダンの「考える人」

■京都国立博物館
■京都文化博物館

| | コメント (0)

【期間限定】コメント欄オープンします

みなさま、いつも私のブログをご覧いただき、ありがとうございます。
カウンターの数字が増えるのをいつも楽しみにしていますが、時にはみなさまと交流できればいいなと思い、期間限定でコメント欄をオープンすることにしました。

いまのところ、コメント欄のオープン期間は、私の一番好きな源氏物語のヒロイン、朧月夜の君にちなんで桜の開花時期、としておきます。どうぞ、ご意見やご感想などをぜひ、お聞かせください。楽しみにしています。

Photo
写真は賀茂川の桜

| | コメント (0)

鶴屋吉信 お休み処「菓遊茶屋」

Wagashi
お寿司屋さんのカウンターやレストランのオープンキッチンなど、調理を見ながら飲食するというのはなかなか楽しいものだ。あれとこれとこれがこうなって、何だかわからないうちにこんな風になっている。マジックのようなプロセスを目の当たりにすると、やっぱりプロの技ってすごい、と思ったりする。動きに無駄がなく、何ごとに付けても素早いのだ。

それを和菓子の世界で体験できるのが堀川今出川にある鶴屋吉信。同店は江戸時代の創業で、御所にお菓子を納めていたこともある老舗。茶道のお菓子としてもよく使われる。同店2階にはお休み処「菓遊茶屋」があり、和菓子やお茶を楽しむことができる。

テーブル席とは別に設けられたカウンター席では、目の前で和菓子作りの実演を見ながら、お抹茶をいただくことができる。といっても、実際に作っている時間は1分足らず。あっという間に季節の和菓子ができあがる。その手さばきのあざやかなこと。目にも止まらぬ早業だ。

今回は少しだけみなさまにもおすそ分け。その技を動画でご紹介しよう。ダウンロードはこちら
今回いただいたのは春らしい「菜の花」のきんとん。中は小豆の歯ごたえが残るこしあん。作りたての和菓子とほろ苦のお抹茶で、ひとときほっこり和むことができた。


Tsuruyayoshinobu

■京都府 京都市 上京区 今出川通 堀川西入(西陣船橋)
■075-441-0105(代表) FAX:075-431-1234
■平日 9:30〜18:00 (17:30 オーダーストップ) 水曜定休
http://www.turuya.co.jp/

| | コメント (0)

京都人形三昧その2 辻村寿三郎 新作人形展〜平成アールデコ〜

Jusaburo

人形の魅力というのは、どこにあるのだろう。きれい、かわいい、美しい…。そんなありきたりな言葉では言い表せないものを人形は持っているように思う。例えば、精緻な技で作られたひな人形や日本人形は美しい。でも、人形と真正面から対峙すると、時に薄ら寒く感じるのはなぜだろう。市松人形のつぶらな瞳、赤い唇。だけど、だけど可愛らしい顔の向こうに得体のしれない不気味さを感じるのは私だけではないだろう。

そんな人形のデーモニッシュな魅力を最大限に生かした作家が現代の人形師、辻村寿三郎氏だろう。氏の人形は様々な表情を持つ。妖艶な人形、何かを語りかけるかのような、ドラマチックな表情の作品、そして愛らしいうさぎたち。だけど、少しずつ不気味さを抱えている。それが魅力となって見る人を惹きつける。

京都高島屋グランドホールでは「辻村寿三郎 新作人形展〜平成アールデコ〜」を開催中だ。新作人形展とあるが、意外に旧作も多い。久々の邂逅に、懐かしく思える人形もある。例えば、南総里見八犬伝の伏姫や八房(伏姫を見ると、「あいーん」といいたくなるのは内緒だ)。そして大蛇が象徴的なオロチなど。そのほか阿蘭陀異聞のシリーズや西鶴五人女、南北五人女、十二星座などの展示も。

うれしかったのは創作人形ドラマ「源氏絵巻縁起」の展示。源氏物語を辻村流にアレンジした作品で、宮中でひどいいじめにあった桐壺更衣はとうとう気が触れてしまうという哀れなストーリー。

ジャポニカや平成アールデコのシリーズは妖艶でスレンダーな美女たちの競演だ。瞳のないまなざしは底知れぬ魅力と魔力をたたえている。それにしても人形なのに何と色っぽいのだろう。もし私が男なら、人形と間違いを犯してしまうかもしれない。乱歩の「押絵と旅する男」の世界。そういえば、辻村氏は押し絵と旅する男を人形芝居にしている。今回、会場ではそのビデオが流されていた。また、小さなステージでは平成アールデコのライブも。

今回、人形たちをじっくりとそばで見て感じたのがその衣装や顔、頭の細やかな仕事。人形の衣装には明治から昭和にかけての古裂を使用しているという。それが見事に人形とそのストーリーにマッチした衣装に生まれ変わっている。洋装の人形ではスパンコールやビーズ、レースなどを多用、実にゴージャスだ。

そんなところまでじっくり見ていくと、小規模な展示ながら1時間半はかかる。見終わったあとには疲れに似た充足感が残った。久々の辻村寿三郎を思いきり堪能できる展示だった。

なお、会期は月24日まで。22日、23日は辻村寿三郎氏本人が来場、サイン会も行われる。いまならきものでの来場者は無料。夕方6時以降はトワイライトサービスで入場料半額。

■辻村寿三郎公式ホームページ
■京都高島屋

| | コメント (0)

「源氏かおり抄の世界」展 〜香りで綴る源氏物語〜

Sugimotoke

源氏物語と香りは切っても切り離せない関係にある。物語の随所で香りは大きな役割を果たす。夜の闇がいまよりも濃かった時代、人々は香りで人を区別していたのかもしれない。例えば、空蝉は自分の寝所に忍んできた人物を、香りで光源氏と判断したわけだし、光源氏は膝行りでてきた末摘花の香りに「さすがは高貴の姫君」と納得している。

また、物語では香りの使い方でその人物や集団の性格を表現している部分もある。例えば「花宴」の巻では、薫き物が煙いほどにたかれていて、女たちが衣擦れの音をさせながら起ち居する右大臣邸の様子を「奥まりたるけはひたちおくれ、今めかしきことを好みたる」と批判的に描いている。「鈴虫」の女三の宮の持仏開眼供養の場面でも同様のことが描かれている。

香りへのこだわりは「梅枝」の巻にもよくあらわれている。ここでは薫き物合わせの様子から、その種類まで書かれており、平安時代の香りを知るよすがとなっている。そして極めつけは自分自身がかぐわしい香りを放つ、薫と薫に対抗してよいお香を焚きしめている匂宮の二人。この二人は光源氏のように「光る」ほど美しくはないけれど、香ったり、匂ったりする程度には美しいのである。

そのほかにも香りが登場するシーンは数多い。ことほど左様に源氏物語と香りは切り離すことのできないものなのである。

その源氏物語五十四帖の世界を、様々な香りや形で表現したのが「源氏かおり抄の世界」展〜香りで綴る源氏物語〜。お香の老舗「松栄堂」が源氏物語千年紀を記念して開催しているもの。各帖を香りやその使い方、容器などで表現する。例えば、花宴であれば、桜模様の匂い箱に香を入れる、須磨であれば海の風物を描いた貝桶に貝の形の匂い袋を入れるといった感じ。と書いてもとても伝わりにくいと思う。これはぜひ現地で見ていただきたい。

会場は築100年を超える町家「杉本家住宅」。室内にはほのかな薫き物の香りが漂う。あるかないかのかすかな香りは、オープンな作りの日本家屋だから似合うのかもしれない。機密性の高いマンションでは、加減を間違えると右大臣家のようになってしまうだろう。展示のほか、聞香も体験できる。やわらかな伽羅の香りは奥ゆかしさに満ちている。

もちろん、会場の住宅そのものにも目を向けてほしい。これは伝統的な町家として京都指定の有形文化財にもなっている。どっしりと黒光りする柱、苔むした庭、荘厳な仏間、どこを見ても堂々たる風格が漂う。杉本家は呉服商奈良屋を営んでいた。そのため、入り口を入った左右には店の間がふたつ向かい合っている。今回展示に使われた座敷は12室。どこまで部屋が続いているのかと思うぐらい広い家屋だ。さらにその奥には、今回は公開されていない土蔵や漬物小屋もある。おくどさんのある台所は一間幅で十二畳分。太い梁や柱に目を見張る。また、同家は祇園祭の際、伯牙山のお飾り場として店の間に屏風や祭りに使われる懸装品が飾られる。京の町衆の伝統を伝える京町家なのである。

源氏物語を香りで表現する展示や聞香体験も目新しく、楽しいものだが、風格漂う京町家の内部を目にすることは少なく、貴重なチャンスだ。開催は3月23日まで。残りあと2日だが、もし機会があれば足を運んでほしい。

■松栄堂 
■杉本家住宅 

| | コメント (0)

京都人形三昧 その1 宝鏡寺

Houkyouji

いつしか、雛をし据ゑて、そそきゐたまへる。三尺の御厨子一具に、品々しつらひ据ゑて、また小さき屋ども作り集めて、 たてまつりたまへるを、ところせきまで遊びひろげたまへり。(源氏物語 紅葉賀)

光源氏の邸に誘拐同然に連れてこられた少女の紫の上は、祖母を亡くした悲しみも少しずつ癒え、新年を迎えた。上記はその一場面、ひいな遊びを楽しんでいる様子である。小さな道具を棚に並べたものや、いくつもある小さな御殿は光源氏からのプレゼント。財力のある光源氏が仕立てたものだ、少女の紫の上にはとても魅力的なおもちゃだっただろう。

平安時代の昔から、人形遊びは女の子の生活から切り離せないものだった。それは出家したとしても同じだ。堀川寺之内にある宝鏡寺は代々皇族の女子が住職となった寺。それだけに、歴代の皇女が慈しんだ人形が数多く所蔵され「人形の寺」と呼ばれている。


Kouchiki

同寺では毎年春と秋に所蔵の人形を展示する人形展を開催している。ことしの春の人形展は1月1日から4月3日まで。今回は皇女和宮をテーマにした展示のほか、ひな人形をはじめ、孝明天皇ご遺愛の御所人形「孝明さん」などたくさんの人形を見ることができる。万勢伊さんという人形はおとらさん、おたけさんというお付きの人形を従えている。さすがは高貴の人のお人形だ。

今回、うれしかったのが撮影専用の人形が置かれていたこと。直衣・小袿姿の有職雛と等身大の小袿姿の人形が展示されていた。内裏雛はノーブルな顔立ちで写実的。お内裏様が向かって右に座っているが、これは京風の飾り方。天子は南面して、先に日を浴びるという宮中の席次に従って、右に置かれるそうだ。逆に関東では洋風の、右(向かって左)に偉い人が座るという考え方から、左右が逆になったという。

また、お雛様のお道具がおくどさんと水屋なのも関西の特徴。見た目のハデさはないけれども、これは女子に家事を習わせるためのものだったとか。

Hinamatsuri

桃の節句を迎えた3月から4月にかけては、京都各所で雛の展示が行われている。このシリーズも、いましばらく続く「予定」だ。

http://www.hokyoji.net/

| | コメント (0)

京都の揚屋 角屋が源氏物語別本所蔵

すでに新聞各紙等で報道されているが、島原の揚屋「角屋」に所蔵されている源氏物語の写本が、鎌倉後期のものとわかった。

いま、源氏物語の写本の主流となっているのは鎌倉時代に藤原定家さんが校訂した、いわゆる「青表紙本」といわれるものである。もうひとつ、鎌倉の地で源光行さん、親行さん親子が校訂した「河内本」とよばれるものもあるが、室町時代以降は、青表紙本の方が定着した。これは歌壇において、定家さん崇拝の風潮があったためとされる。

河内本の方は、青表紙本よりも本文が説明的で、意味が取りやすいとされているが、紫式部さんの文体城の特色とされる部分も消えているといわれる。一般的には青表紙本の方が、もとの文体を伝えているとされる。

ところが、今回鎌倉後期のものと判明した写本は、青表紙本とは別系統になることがわかった。残されているのは「末摘花」の巻だが、末摘花さんの容姿などについては青表紙本よりも詳細に記されているという。

京都新聞に記された加藤洋介大阪大学文学研究科準教授の談によればこれは定家さん以前の平安期の異本の可能性もあるとか。私たちはいまある青表紙本の源氏物語を原文として読んでいるが、紫式部さんの原典にかなり手が入っている可能性が高いかもしれない。定家さんが百人一首にもしばしば手を入れていることからもそれは容易に想像できよう。

例えば、持統天皇の「春過ぎて 夏きにけらし 白妙の 衣干すてふ 天香具山」はもともとは「春過ぎて 夏きたるらし 白妙の 衣干したり 天香具山」だ。定家さんの手が入って、少しばかり洗練されたかもしれないが、原作の力強さは失われたように思う。源氏物語に対しても、同様の改訂がなされていないとは限らない。

とまれ、貴重な異本である。完本なら重文クラスだとか。この写本はきょうから7月18日まで、角屋で一般公開されるそうだ。ぜひ足を運んでみたい。

写真は角屋Sumiya

| | コメント (0)

「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学21」ごめん、すっかり忘れてた!(2)

■待ち続けた姫君の真心
一方の光源氏。久々に紫の上に再会し、心を奪われています。疎遠だった人のことはほとんど思い出さない始末。たまに思い出しても「まだ生きてるのかな?」程度にしか考えていませんでした。四月になって、たまたま花散里を思い出し、訪ねようとしたときのことでした。藤の花の香る荒れ果てた邸のそばを通りました。「あれ?どこかで見たことあるかも」と気づいた光源氏、ここが常陸宮邸であることを思い出しました。

光源氏はお供の惟光にまだ人が住んでいるか邸を探らせました。狐や狸が住んでいるような荒れ果てた敷地ですが、まだ人は住んでいました。ようやく末摘花を思い出した光源氏、このように荒れ果てた邸で過ごしていた末摘花の気持ちを思うと自分の冷たさが思い知られます。

末摘花にすれば待ちに待った光源氏との再会です。心ははやりますが、みすぼらしい自分の姿がとても気になります。あの、憎たらしい叔母が贈り物代わりに置いていった新しい衣装があるのを思い出し、急いで着替えました。幸い、香木でできた箱に入れていたせいかいい香りがなじんでいます。邸は荒れ果てても、貧乏でも、末摘花のところには由緒正しい香木や香料がたくさんありました。落ちぶれても宮家の姫君だけのことはあります。

光源氏にはこのように荒れ果てた邸で待ち続けた末摘花の真心が身にしみました。都へ戻って再会した人々のなかには手のひらを返したように光源氏におもねる者もいますが、末摘花は昔と変わらず遠慮がちで控えめです。男女の愛を感じるというのではありませんが、その心には誠実に応えようと思ったようでした。須磨の荒波にもまれた光源氏、少しは人の心がわかるようになったのでしょうか。

その後、光源氏は末摘花の邸を手入れさせ、常陸宮邸にはようやく人並みのくらしが戻ってきました。去っていった女房たちは、ほかの邸の厳しさを知り、末摘花のやさしさ、穏やかさを思い知りました。光源氏に思い出してもらえるまでひたすら待ち続けた末摘花。見た目は不美人でも、心根の美しさは人に勝っていました。光源氏もそれを目の当たりにし「忘れててごめん!」と思ったに違いありません。末摘花のことを忘れていたのは光源氏の失敗でしたが、そこから彼女の真心が見えてきたというお話でした。

ところで、紫式部顕彰会が発行している「京都源氏物語地図」によれば、末摘花の邸は現在の京都御所の南東角に想定されていたとされています。いまはテニスコートになっているあたりです。花散里邸や紀伊守の邸などもこの近くに想定されていたそう。少し北には紫式部邸跡である盧山寺もあり、源氏物語ゆかりの地のひとつとして訪れたいところです。(この項終わり)
※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

| | コメント (0)

「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学21」ごめん、すっかり忘れてた!(1)

■忘れられた女の孤独
明石から戻った光源氏は、中央政界に返り咲き、多忙に過ごしています。仕事に精を出しているかと思えば、亡き父・桐壺院の法会を執り行ったり、明石で生まれた娘に乳母を派遣したり、かつての愛人たちを訪れたり、華やかな毎日です。

光源氏といえば、一度関係を結んだ女たちのことは忘れない、とよくいわれていますが、実のところそうでもなかったりします。みなさま「末摘花」というお姫さまを覚えておいででしょうか。そう、あの常陸宮の姫君。源氏物語一番のブス、赤鼻のお姫さまです。

宮家の血をひく彼女、生まれは高貴ですが、父宮が亡くなって後は非常に貧しい没落貴族として暮らしていました。そこへ白馬の王子様のごとく訪れたのが光源氏。末摘花のくらしを援助し、窮状を救いました。ところが光源氏の須磨退去で援助はとぎれ、彼女のくらしは再び貧窮します。

周囲の女房たちも一人辞め、二人去り、離散していきました。年老いた女房たちの中には亡くなった人も。女房たちは末摘花に「邸を売って引っ越しを」とすすめますが「父君の形見の邸を売るなんてとんでもない」と頑なに聞き入れません。道具類も由緒正しい立派なものがそろっていますが、同じ理由で手放さないため、ほこりをかぶったまま。

邸は荒れ果て、フクロウが鳴き、狐が住み着き、お化けでも出そうな気配。時には牧童が牛を放し飼いにする始末。おまけに台風で廊下の一部が壊れたり、下仕えの人が住む小屋がつぶれたり、炊事すらままならない有様で、泥棒も寄りつきません。

そんなところへ聞こえてきたのは光源氏帰京の噂。長年待ち続けた人が戻ってきたのです。しかもあちこちの女性のところへも尋ね歩いている様子。末摘花は光源氏の訪れをいまかいまかと待ち続けました。でも、まったく思い出してもらえる様子もありません。悲しみは光源氏の帰京前よりいやまさります。末摘花は人知れず涙に暮れるのでした。

そんなときやってきたのが母の妹で受領の妻に没落している叔母。彼女は末摘花を自分の娘の女房にしようと考えていたのです。末摘花は頑なに断り、光源氏を待ち続けます。そうこうするうちにこの叔母の夫が太宰の大弐になり、叔母も一緒に赴任することになりました。末摘花を再び誘いに来た叔母は「光源氏様は紫の上しか興味はないよ。昔から通っていた人からもすっかり心は離れてしまったんだって。こんなあばら屋に住んでる人なんか、尋ねてくることはないでしょうね」などと意地悪なことばを投げかけます。さすがの末摘花を涙をこらえられません。

さらに悲しいことに、長年一緒に育った乳母子の侍従という女性が太宰大弐の甥と恋仲になり一緒に太宰府に下ってしまうことになりました。唯一心許した乳母子すらそばから去り、末摘花の孤独はいやまさります。毎日泣き暮らす日々が続きました。でも、赤鼻のお姫さまが泣くわけで、一層鼻はまっ赤っか。紫式部は「まるで赤い木の実を顔にくっつけているみたい」と意地悪な書き方をしています。(次回に続く)

| | コメント (0)

その後の清涼寺

Shakadou

昨年暮れ、酔っぱらいの狼藉によってひどい目に遭わされた清涼寺のその後である。

漏れ聞くところによればその後、くだんの酔っぱらいはポンと1億円、修理費を支払ったそうだ。それだけ支払える、支払ってすまされる御仁だということだ。

現在、門にはトタンの仮設の扉が設けられており、痛々しいことこの上ない。源氏物語千年紀なのに、物語の舞台がこれでは痛ましいことである。まだ、修理される様子はなさそうだが、文化財の修復ということもあり、単純に新しい門を作るというわけにはいかないのだろう。今後どのように修復するのか、気になるところだ。

| | コメント (0)

嵯峨豆腐 森嘉

娘の千重子が、ひるごろに来た。
「おとうさん、森嘉の湯豆腐をおあがりやすか。買うてきました」
「ああ、おおきに……。森嘉の豆腐もうれしいけど、千重子の来たのはもっとうれしい。(後略)」(川端康成「古都」)

この小説によって全国的に有名になった嵯峨豆腐の店である。
高校の国語の女性教師が同店について話してくれたことがあった。
「あそこの店、最初は地味ぃにしてはったのに、あの小説に書かれてから、次にいったらお店が立派になってて、その次に行ったら奥さん、こぉんな大きなダイヤモンドしてはった」と指で輪を作った。Morika

同店は嵯峨・清涼寺のすぐ東に位置する。創業は安政年間というから、約150年程度だろうか。立派な店構えはまだ新しく感じる。これが「立派になってて」という店なのか。それともさらに立派になっているのだろうか。土曜の昼下がりだが、老若男女入り交じってひっきりなしに人が訪れる。私の前に訪れた若い男性はおみやげだろうか一人で豆腐を2丁、おあげさんを2枚、飛竜頭を3つなど、かなりの量を買い込んでいた。

商品を買うのは同店の作業場の前。従業員がすぐそばで豆腐をパックに詰めている。目の前で詰めている姿は、誠実さと安心感を与えてくれる。豆腐は1パック2丁入りで400円。容器を持って行けば1丁200円で買うことができる。同店の豆腐はなめらかで柔らかいのどごしが特徴だ。これはにがりの代わりにすまし粉を使っているからだそう。湯豆腐にすると崩れやすいけど、口当たりがよさそうだ。

だけど、これからまだ嵯峨野観光の予定がある場合、崩れやすく傷みやすい豆腐を持って歩くのはちょっとためらわれる。そんな人におすすめなのが同店の飛竜頭(ひろうす)1個200円。水分も少なく、油で揚げてある分、傷みにくいので安心だ。

Hirousu

いわゆるがんもどきだが、「飛竜頭」という名前はちょっとすごいと思う。文字だけ見ると、龍の頭が火を噴きながら飛んでくるところを想像してしまう。食べ物の名前とは思えない。とまれ、飛竜頭である。普通は黒ごまときくらげぐらいが練り込まれたもので、中も結構すかすかしていたりするのだが、同店の飛竜頭はずっしり重い。大きさは直径5センチ以上はあろうかという感じ。まるでボールのようだ。黒ごまときくらげのほか、人参も練り込まれている。

これを煮物にしていただいた。箸で割ろうとすると、中で何かにぶち当たる。出てきたのは大きなユリネがいくつか。さらにユリネの中心部にはぎんなんがひとつ。その意外性に、宝探しの宝物を見つけたような喜びを感じる。ユリネの甘さとぎんなんのもっちりした食感も楽しい。それに油で揚げているためか、中身がたっぷりつまっているせいか、かなりボリュームだ。夕食のおかずはこれだけで満腹になってしまった。

■京都市右京区嵯峨釈迦堂藤ノ木町42
■075-872-3955

| | コメント (0)

嵐電 「紫のゆかりちゃん号」

何しろ千年に一度のことである。普段人に乗られている電車だって、たまにはイベントに乗っかりたいのだ。

京福電気鉄道嵐山線、通称「嵐電」は京都の住宅の間をゴトゴトと抜けていくローカル線だ。四条大宮〜嵐山間を約22分で結ぶ。1両編成(ラッシュ時はさすがに2両だったりする)の可愛らしい列車は商店街の脇を走り、蚕ノ社や太秦の広隆寺のそばを通って嵐山駅に着く。ちょっぴり時代に乗り遅れたような列車が何となく愛しくて、私はこの路線が好きだ。

この嵐電に今年1月から登場したのが「紫のゆかりちゃん号」。源氏物語千年紀にちなんだラッピング列車。車両には源氏物語各巻の屏風絵が描かれている。これは嵐電が出している「源氏物語千年紀 プレミアム乗車券」と同じ絵柄。

Yukarichan


乗車券にはなっていない「賢木」や「葵」「花散里」「蛍」なども描かれ、目を楽しませてくれる。乗車券で見るより大きい分、はるかに見応えがあって美しい。特に月と松をバックに光源氏と明石の君が寄り添う「明石」は波の音が聞こえてくるようで、印象的だ。

Akashi

車内も中吊りや広告スペースはすべて源氏物語屏風絵が掲出され、まさに源氏物語一色。ていねいなことに、つり革も紫で「源氏物語千年紀」のロゴが。源氏物語ファンとしてはかなりうれしい列車だ。22分間、源氏物語の世界に思いをはせながら、小さな旅が楽しめた。

Yukarichanshanai
なお、運行時刻はご確認を。
京福電気鉄道

| | コメント (0)

源氏物語千年紀委員会 毎週プレゼントが!

先ごろリニューアルした源氏物語千年紀委員会のウェブサイト。ここでは「光る源氏の玉手箱」として毎週プレゼントが当たる懸賞を実施している。

ただいまの目玉はフランスで発行された源氏物語の豪華本「Le Dit du Genji」。こちらは5月7日までの応募者の中から1名に。フランスのAmazonで割り引き後の価格が456ユーロという高額書籍だ。1ユーロが158円程度として、日本円で約72000円。これは当たればとてもうれしい。

そのほか純金カレンダーや嵐電のプレミアム乗車券などは毎週当たる。事務局の方によれば、まだ、いまなら当たる確率が高いそうだ。あなたも運試し、いかがだろう。

| | コメント (0)

« 2008年2月 | トップページ | 2008年4月 »