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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学21」ごめん、すっかり忘れてた!(2)

■待ち続けた姫君の真心
一方の光源氏。久々に紫の上に再会し、心を奪われています。疎遠だった人のことはほとんど思い出さない始末。たまに思い出しても「まだ生きてるのかな?」程度にしか考えていませんでした。四月になって、たまたま花散里を思い出し、訪ねようとしたときのことでした。藤の花の香る荒れ果てた邸のそばを通りました。「あれ?どこかで見たことあるかも」と気づいた光源氏、ここが常陸宮邸であることを思い出しました。

光源氏はお供の惟光にまだ人が住んでいるか邸を探らせました。狐や狸が住んでいるような荒れ果てた敷地ですが、まだ人は住んでいました。ようやく末摘花を思い出した光源氏、このように荒れ果てた邸で過ごしていた末摘花の気持ちを思うと自分の冷たさが思い知られます。

末摘花にすれば待ちに待った光源氏との再会です。心ははやりますが、みすぼらしい自分の姿がとても気になります。あの、憎たらしい叔母が贈り物代わりに置いていった新しい衣装があるのを思い出し、急いで着替えました。幸い、香木でできた箱に入れていたせいかいい香りがなじんでいます。邸は荒れ果てても、貧乏でも、末摘花のところには由緒正しい香木や香料がたくさんありました。落ちぶれても宮家の姫君だけのことはあります。

光源氏にはこのように荒れ果てた邸で待ち続けた末摘花の真心が身にしみました。都へ戻って再会した人々のなかには手のひらを返したように光源氏におもねる者もいますが、末摘花は昔と変わらず遠慮がちで控えめです。男女の愛を感じるというのではありませんが、その心には誠実に応えようと思ったようでした。須磨の荒波にもまれた光源氏、少しは人の心がわかるようになったのでしょうか。

その後、光源氏は末摘花の邸を手入れさせ、常陸宮邸にはようやく人並みのくらしが戻ってきました。去っていった女房たちは、ほかの邸の厳しさを知り、末摘花のやさしさ、穏やかさを思い知りました。光源氏に思い出してもらえるまでひたすら待ち続けた末摘花。見た目は不美人でも、心根の美しさは人に勝っていました。光源氏もそれを目の当たりにし「忘れててごめん!」と思ったに違いありません。末摘花のことを忘れていたのは光源氏の失敗でしたが、そこから彼女の真心が見えてきたというお話でした。

ところで、紫式部顕彰会が発行している「京都源氏物語地図」によれば、末摘花の邸は現在の京都御所の南東角に想定されていたとされています。いまはテニスコートになっているあたりです。花散里邸や紀伊守の邸などもこの近くに想定されていたそう。少し北には紫式部邸跡である盧山寺もあり、源氏物語ゆかりの地のひとつとして訪れたいところです。(この項終わり)
※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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