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「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学20」愛人に子ができた!(2)

■紫の上の孤独と悩み
そうなるとまず越えなければいけないのが、紫の上というハードルでしょう。現地にとどめておくならともかく、都へ住まわせるなら、いずれ彼女の耳に入らないとも限りません。光源氏は自分の口から紫の上に、明石の君が出産したことを伝えることにしました。「子どもが産まれてほしいところには生まれず、そうでないところに生まれてしまうなんて残念だ。しかも女の子なのでつまらない。まあ、放っておくこともできないので、京へ呼び寄せてあなたに見せようと思います。憎まないでくださいね」

こんなことを言われた紫の上の心情は察するにあまりあります。「つまらない」なんて光源氏はいってますが、うれしくて仕方ないはずです。しかも「憎まないでくださいね」なんて、まるで彼女が明石の君やその子を憎むのが前提みたいないい方です。ひどいと思いませんか?光源氏って空気読めないひどい奴、という感じがします。さらに光源氏は、明石の君の容貌や、琴の名手だったことなどについて紫の上に語り続けます。

こんなことを聞かされる彼女の気持ちはいかばかりでしょう。自分は都で一人寂しい思いをしていたのに、一時の慰みとはいえほかの女性と関係を結んでしまったなんて。しかも、自分には子どもが産まれないのに、彼女には子どもが産まれたのです。紫の上は「われは、われ」と一人つぶやき、光源氏に背を向けてしまいました。彼女をこんな気持にさせるなんて、光源氏は大失敗をしたような気がしませんか?現代人の感覚からしたら、光源氏はとてつもなく女心を解さないひどい男、と思えます。

だけど、この明石の君出産の告白は後々のためにも必要な事件でした。明石の君は田舎には珍しい、都の貴族並みの美貌と才気に恵まれたすばらしい女性です。だからこそ光源氏も心ひかれたわけですが、悲しいかな、その出自だけは努力によって変えることはできません。彼女の父、明石入道は受領階級の出身。外腹とはいえ皇族の血をひく紫の上とは厳然たる身分の違いがあります。明石の君の娘が将来お后になるのであれば、明石の君のもとで育ってはいけないのです。

明石の君の生んだ姫君はその後、紫の上に引き取られ養女として育てられます。これによって彼女は受領階級から、貴族へと階級移行し、お后候補として育てられることになります。光源氏が紫の上に投げかけたことばはたしかに彼女の気持ちを無視したものかもしれませんが、娘の将来を慮ってのことでもありました。従って、これは失敗とはいえないというのが、私の考えです。(この項終わり)
※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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