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源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学18 明石入道は失敗したのか?(2)

(前回からの続き)

■結婚したのはいいけれど

さて、光源氏を明石に迎えた入道、こうなったら作戦開始です。まずは男同士でうち解けて話し合い、その次は娘の琵琶が上手なことを自慢します。そういわれれば「一度聞かせてよ」というのが、礼儀でしょう。そうでなければ光源氏ではありません。でも、光源氏と明石入道の娘(=明石の君と呼びます)は、ずいぶん身分違い。光源氏も最初は自分の家に娘をよこすよう、話を持って行こうとしています。

でも、これでは召人扱いです。召人というのは、お手つきの使用人のこと。決して対等な扱いではありません。入道は、何とか、妻の一人として扱ってもらおうとあの手この手を使い、ようやく光源氏を自宅に迎えることに成功、明石の君は光源氏と結ばれることになりました。

これだけなら、明石入道の作戦は大成功ですが、光源氏は都に愛する紫の上を残したままです。都を出てくるときには「心はあなたのそばにあるよ」と誓い合ったのに、一人にしておけばこの始末。さすがに本人も気がとがめたのか、明石の君のところに通う足も間遠になりがちです。明石の君は、こんなかりそめの関係なら、出会わない方がよかったと悔やみます。

それでも、男女の仲は少しずつ慣れ親しむもの。時間とともに、光源氏の訪問も少しずつ増えてきました。その上、明石の君のお腹には光源氏の子が宿ったようです。これで自分の立場も安泰、と思ったかどうかはわかりませんが、少し気持ちも落ち着いた矢先、光源氏に帝の勅許が出て、都に戻ることになったのです。当然明石の君は置き去りです。女からすれば「私はもてあそばれただけ?」という気がするでしょう。

頑固で変わり者の父が、もし光源氏などと結婚させようと思わなければ、明石の君はこんな物思いなどしなくてすんだはずです。光源氏を送り出した明石の君の嘆きはどれほどだったでしょうか。いや、彼女だけではなく、周囲の嘆きも相当でした。入道の妻は「どうしてこんなに苦労の多い結婚をさせたのかしら。あなたに従った私が馬鹿でした」とため息をつき、乳母と一緒に入道を非難します。入道は部屋の隅でいじけてしまいました。さらに数珠の置き場所がわからなくなったり、庭の遣り水に落ちて岩角で腰をしたたか打ったり、もう、さんざんです。きっと彼も心の中では「この結婚、失敗だったかも」と後悔していたのかも知れません。

さて、ここまでのお話だけなら、明石入道はぜいたくな高望みをして、娘を結婚させたのはいいけど、結局明石に置き去りにされて大失敗したということになりますが、お話はそう一筋縄ではいきません。きょうのところは「明石入道は失敗したのか?」という疑問だけを投げかけて、物語はこの先に続きます。(この項終わり)
※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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