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源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学16 王朝貴族の恋愛術 成功と失敗(1)

今回は源氏物語に見る、恋愛術の一例を取り上げたいと思います。まずは恋の成功者、光源氏の事例から。

◆ことばの魔術師、光源氏

光源氏がなぜ、たくさんの女性をものにすることができたのか、その要因はいくつもあります。まず、絶世の美男子であること。そして高貴な生まれと育ち。財力、父や嫁の実家のバックアップ、地位、名誉、才能・・・数え上げればきりがありません。でも、こんな華麗な経歴は、まあ普通に生まれ育った私たちには縁のない話です。

しかし、光源氏とて、生まれや育ちだけに依存して恋の勝者になったわけではありません。彼は恋の才能も豊かでした。その中でも特に目立つのが「マメ」ということ。いい女と聞けば、必ず口説く。口説かなくちゃ失礼に当たるとばかり、口説く。人間違いをしても口説く。

たとえば、空蝉の寝所に忍び込んだとき、空蝉と間違えてしまった軒端の荻に対しても「あなたを以前からお慕いしていました」なんて、しゃあしゃあと口説いています。あるいは、末摘花のような不美人でも、源典侍のような老婆でも、とりあえず口説いてみます。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるのです。

しかも光源氏の場合、鉄砲はほぼ百発百中。その秘訣はどこにあったのでしょうか。そのヒントは乳母の病気見舞いの場面に見られます。「私は子どものころに母も祖母も失って、あなたを親のように思ってきました」とか何とか、相手がほろりと来るような優しい言葉をかけています。

人間、お世辞とわかっていても、心をくすぐるような言葉をかけられればうれしいものです。しかも、それが本心から出ているように思えればなおさらのこと。光源氏は恋人だけではなく、お年寄りでも、誰にでも優しい言葉をかける人でした。それはまるでことばの魔術師。相手の立場に立ち、相手が何を言われれば喜ぶかを心得ているということです。これが光源氏を恋の勝者にした要因の一つでしょう。

あるいは、光源氏の障碍をものともしない大胆さも、女心を揺り動かす要因の一つかも知れません。たとえば、父帝の妃、藤壺との恋。数少ないチャンスを見つけ、人目を忍んで訪れる光源氏の姿に、藤壺は表向き拒みながらも、やはりその心にほだされていたのではないかと思います。

朧月夜の君との逢瀬もしかり。彼女は光源氏の政敵、右大臣の娘で、亡き母のライバル・弘徽殿女御の妹です。そんな人と、しかも彼女の家で逢瀬を繰り返していたのですから、やはり大胆としかいいようがありません。「もし見つかれば身の破滅」かも知れない逢瀬。それでも会いに来てくれる男性に、朧月夜の君は熱い思いを抱かずにいられなかったでしょう。(次回へ続く)

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