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源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学11 女の恨み、買うべからず(1)

今回も雅に参りましょう、といいたいところですが、そうはいかないちょっと恐ろしげな気配。少しは残暑を和らげてくれるかもしれない、オカルトなお話に突入です。

◆賀茂神社の御禊の日に

光源氏22歳の夏。朝廷では桐壺帝が退位し、弘徽殿女御の長男・朱雀帝が即位。同じころ、光源氏の妻・葵の上が初めての子を妊娠します。この話でいつも思うのは、不仲でもセックスレスではなかったんだな、ということ。意外な気もします。とまれ、光源氏は妊娠した妻を見て、いままでになかった愛情を感じるようになっていました。

それとは逆に、光源氏の冷たさに泣いていたのが六条御息所。正妻には子どもまでできたというではありませんか。彼女の苦しみはつのるばかり。ちょうど六条御息所の姫君が天皇の代替わりに伴って伊勢の斎宮に選ばれたのを機に、一緒に伊勢に行ってしまおうかと思案しています。

斎宮と同時に、賀茂神社に使える齋院も代替わりします。そのときには様々な儀式が行われます。これがいまに伝わるのが葵祭。祭の前日に行われる御禊(身を清めるみそぎ)では、上達部がお供をすることになっています。光源氏もその一人に選ばれました。祭当日は、日ごろ姿を見るのも珍しい貴公子達が登場するとあって、大勢の人が見物にやってきました。なかでも光源氏はまるでアイドルのような人気です。

貧しい人々は徒歩で、身分の高い人は桟敷や牛車の中から見物します。その中にひっそりと止められている網代車がありました。光源氏への思い断ちがたく、ひと目を忍んでやってきた六条御息所の牛車です。ところが、そんなに混雑したところへ、大勢の従者を従えてゆっくりやってきた車が。こちらは周囲から進められて渋々やってきた葵の上の車。さあ、大変!本妻と愛人の鉢合わせ。ドキドキもんです。

葵の上の従者は、主人の威を借りて六条御息所の車を押しのけようとします。そこから従者同士の小競り合いが始まり、六条御息所の車は御簾が破れたり、車を壊されたり、見るも無惨な姿になって片隅へ押しやられてしまいました。

ちょうどそこに行列がさしかかります。光源氏は相変わらずの水際だったいい男っぷり。自分の女たちには目配せを送ったり、葵の上の前では威儀を正したりして通り過ぎていきます。でも、みすぼらしい姿になった六条御息所の車には目もくれません。高貴な生まれで、皇太子妃にまでなった六条御息所。世が世なら、彼女が皇后だったはずなのに、いまはただの捨てられかけの愛人です。しかも、正妻の従者にまで横暴を働かれ、六条御息所のプライドはずたずたに傷ついてしまいました。(明日に続く)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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