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源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学11 女の恨み、買うべからず(2)

(昨日からの続き)
◆知らぬ間に魂が抜け出して・・・

あの祭の日から六条御息所は時々、嫌な夢を見るようになりました。出てくるのは葵の上と思われるきれいな女性。六条御息所は、横たわっている彼女の髪を持って引きずったり、激しく叩いたり、日ごろはあり得ない乱暴狼藉をはたらいています。「もしかしたら自分が知らない間に魂が抜け出しているのかも・・・」。おののく六条御息所。世間も葵の上が六条御息所の生き霊に悩まされているとうわさしています。「うわさは本当かもしれない」。人知れず悩む日が続きます。

一方、こちらは葵の上。出産までまだ日があると思われていたのに、急に産気づいて苦しみはじめました。大臣家のことですから、万全を期して加持祈祷にも力が入ります。そのとき、光源氏に向かって「お話ししたいことが」と葵の上。陣痛に苦しむ妻の手を取り、光源氏が慰めようとしたときです。

「調伏が苦しいので、少しゆるめてください。物思う人の魂がからだを離れてしまうって本当だったのね」そう語る女性の様子や声はまるで六条御息所。目の前で妻が愛人に変身してしまいました。そのときの光源氏の心情を、原文では「あな、心憂」と簡潔に表現しています。今風にいえば「うわぁ、気持わる〜」といった感じでしょうか。自分の奥さんの顔が、愛人の顔に変わったりしたら、それは気持ち悪いでしょうね。これを読んで「ぞっ」としたあなた、もしかして不倫中ですか?それなら、どうぞ気をつけてくださいね。

さて、苦しみながらも葵の上は無事男の子を出産しました。後に「夕霧」と呼ばれるようになるこの子は、表向き光源氏の第一子ですが、実は2人目の子ですね。そんなことは知らない帝や貴族たちからは続々と出産祝いが届きます。

六条御息所の耳にもそんな話は聞こえてきます。心は穏やかではありません。魂が抜けたような気がするときは、体に護摩を焚いたときの芥子のにおいが染みついているように思えます。髪を洗っても、衣を着替えてもにおいは落ちません。生き霊になってしまった浅ましい自分。六条御息所の嘆きはつのるばかり。(明日に続く)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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