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源氏物語の登場人物1 惟光

源氏物語の登場人物は約100人。その中で好きな人物は誰だろう。紫の上が好きな人がいれば、六条御息所が好きな人もいる。光源氏が好きという人には、まだ出会ったことがない。そして私が一番好きな人物が、この「惟光」という脇役なのだ。

惟光は光源氏の乳母子(めのとご)。乳母子というのは読んで字のごとく、乳母の子どものこと。主人(この場合は光源氏)が誕生したとき、乳母は母乳が出ている最中だから乳母子は主人よりも少しだけ誕生が早いということになる。主人の遊び相手になったり、ともに育ちながら、家族的な主従関係を築いていく。

惟光は物語中非常に気の利く乳母子として描かれ、その活躍は随所に登場する。おそらく、光源氏の恋のいくつかは彼の活躍なくしては成就しなかっただろう。

たとえば、夕顔の女房と恋仲になって、夕顔の素性を調べる逸話が登場する。夕顔の素性を調べるために女房を口説いたのか、女房と恋仲になったから、夕顔の素性がわかったのか、そのいずれかはわからないけれど、おそらく両方だろう。調べているうちに、彼女もゲットした感じだろうか。夕顔に関しては、その死の後始末についても一人で処理している。あるいは朧月夜の正体を探ったり、少女時代の紫の上を二条院に連れてくるまでの連絡係をしたり、大活躍だ。

その活躍の真骨頂を表すのが「澪標」の巻。住吉詣での際、明石の君の一行と偶然出会った光源氏に「こんなこともあろうかと」(真田さん?)、いつも用意している筆や墨などを光源氏に差し出した。これには光源氏も「をかし」と感心している。

その後も惟光はたびたび物語に顔を出す。五節の舞姫になった娘は光源氏の息子の夕霧に見初められ、5人の子どもを産む。娘の呼称が「藤典侍」というところから、惟光が藤原氏の流れを汲むことが読み取れる。最後の登場では惟光は宰相に昇進、息子も兵衛尉に任官するなど、惟光一家は前途洋々だ。

子どものころから、裏切ることなく光源氏に仕えてきた惟光。恋の使いはもちろん、光源氏の回りから多くの人が去っていった須磨退去の際にも離れず付き従った。その忠臣ぶりが、彼の繁栄をもたらしたのだろう。その一方、光源氏に馬を譲って裸足で歩きながら「こんな姿を彼女に見られたらつらいなぁ」と嘆いたり、夕顔の死を嘆く光源氏と一緒においおい泣いてみたり、彼の姿は源氏物語の登場人物の中では、非常にイキイキと描かれている。そういった点も、私を惹きつける理由の一つかも知れない。

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