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源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学5 末摘花の巻 やっぱり、うわさを信じちゃいけないよ(2)

(昨日からの続き)
◆赤鼻のお姫様

さて、久々に姫君と一夜を過ごし、明くる朝は一面の雪。この雪明かりで光源氏は初めて姫君の顔を見ました。そのときの感想は「あな、かたは」と書かれています。「うわ、なんだこれは!」という感じでしょうか。やけに座高が高くてやせさらばえていて、おまけにひどい馬面で、着物も薄汚れていて、黒貂の毛皮を羽織った姿は目も当てられません。
何より驚いたのは鼻の先が長く垂れ下がっている上、赤く色づいていること。このことから彼女はベニバナの別名である「末摘花」の名で呼ばれます。

紫式部は残酷なほどリアルに彼女の不美人ぶりを描いています。ただ、落とすばかりではなく「髪の毛だけは黒々と長く豊か」と美点を書き加えているのはさすがに宮家の姫君に遠慮したのでしょうか。まあ、彼女の姿を見た光源氏はそれはそれは驚いたでしょう。いままで美人ばっかり見ていたのに、こんな不美人に出会うなんて。

でも「そんなブス、何でいままでわからなかったんだ?」って思っている人、いませんか?当時は電気がありませんから夜は完全な闇。外では月明かりや星明かりだけが頼りです。室内では小さな燭台程度の灯りはありましたが、部屋全体を照らす灯りはありません。もし、光から顔を背けていたら、顔なんてほとんどわかりません。おまけに当時の女性は基本的に人に顔を見せないようにしていましたから、関係を持っても顔を知らない、ということもあり得たわけです。なので、この光源氏のオドロキも不自然なことではありませんでした。

それよりも、今回の光源氏の失敗は、人のうわさ話に乗せられたところにありました。実は末摘花の情報を光源氏に伝えたのは彼の乳母子の大輔の命婦という女房。彼女は末摘花の屋敷、すなわち常陸宮家でも働いていました。ところが常陸宮家はいまや破産寸前。大輔の命婦にとっても死活問題ですから、資金源が必要です。それには光源氏と末摘花をくっつけるのが一番、と考えたんですね。実際、光源氏は常陸の宮家の窮状を放っておけず、援助の手をさしのべています。だから、今回の教訓は「人のうわさ話には要注意」ということです。だけど、結果的には常陸宮家を救ったのですから、OKとしましょうか。(この項終わり)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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