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伏籠

平安文学に登場する伏籠とは、装束に香の香りを移す道具で、火取の上に金属や竹でできた籠をのせたものだ。源氏物語には伏籠が印象的な小道具として登場する場面がある。

そのひとつが若紫登場のシーン。泣きながら、走り出してくる少女の姿は躍動的で、それまでに登場した物語の女性とはまったく異なる。彼女は「 雀の子を 犬君が逃がしつる。伏籠のうちに 籠めたりつるものを」と祖母の尼君に訴えかける。伏籠を鳥籠の代用として使っていたことがここからわかる。

一方、火取は香を焚く道具。中に薫炉が入っている。これを使った印象的なシーンは髭黒大将の前妻乱心の場面。六条院にいる玉鬘のところへ向かうため、香をたきしめたり、おしゃれに余念がない髭黒大将。前妻は身なりもかまわず、泣きはらした目でうち沈んでいる。髭黒大将は、心がとがめながらも、心は玉鬘のもとへとはやる。

そのときだ。ものに寄り臥していた前妻が、突如起きあがり、大きな伏籠の下の火取を取り上げ、その中身を夫に浴びせかけたのだ。灰が舞い上がり、目や鼻に入る。せっかく着替えたばかりの装束にも焼けこげがいくつもできる。結局、髭黒大将は外出をあきらめるハメになった。これも悲しいけれども、源氏物語屈指のドタバタシーンだろう。そんな身近な小道具を使った細やかなエピソードが、源氏物語にリアリティを添えている。もしかしたら、紫式部の身辺でそういった事件があったのかも知れない。

写真は源氏物語ミュージアムの展示 伏籠と衣桁
衣装もきれいだけど、その話はまた今度。
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