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源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学3 若妻から目を離してはいけません(1)

◆夫は単身赴任中。そこへ…

母に死に別れてから十数年、17歳の光源氏はいまをときめく貴公子に成長しました。たぶん王朝一のモテ男。六条御息所という年上の恋人もいます。ほかにもガールフレンドの三人や四人はいるはずです。

ある夏の晩、光源氏は方違え(陰陽道の習慣)のため紀伊守(きいのかみ)の屋敷に泊まることになりました。この夜は紀伊守の父・伊予介(いよのすけ)の後妻も家族連れで泊まっています。伊予介は若い後妻をとても大切にしているのに、なぜか現在単身赴任中です。

光源氏が急に泊まりに来たこともあり、紀伊守の屋敷は人でいっぱい。どこか近くで女たちが自分の噂をする声が聞こえたり、動き回る気配がしたりします。「悪友たちが『中流の女にいい女がいる』なんていってたけど、こういうのが中流かな?」なんて、光源氏は考えています。

夜も更けて皆が寝静まったころ、光源氏の寝所に近い部屋で人の気配が。話の内容からどうやら伊予介の後妻のようです。この人は後に空蝉と呼ばれるので、ここでもそう呼ぶことにします。光源氏の好奇心がむくむくと頭をもたげます。人の気配がなくなると、そっと隣の部屋を開けてみました。なんと!鍵がかかっていません。

部屋の中には小柄な女が寝ています。おそらくこの人が空蝉です。光源氏は「長年あなたを思い続けてきました」と、口からでまかせの殺し文句を吐きながら空蝉を抱き上げ、自分の部屋に連れ帰ってしまいました。途中、空蝉の召使いの女房に会いますが、光源氏は悪びれもせず「明け方にお迎えに参れ」と告げます。このあたりが「何をしても許される」と思っている、貴公子の図太さ。本当にいまは恐いもの知らずなんでしょう。

で、自分の部屋に戻った光源氏、思いがけず空蝉の激しい抵抗に遭います。でも、さすがに男の力にはかなわず思いを遂げられてしまいました。空蝉は図らずも不倫することになってしまったのです。

だいたい、光源氏を女性がいっぱいいるところに泊まらせるなんて、虎を野に放つようなもの。だけど、この巻を読んでいつも思うのは「なぜ伊予介は愛妻を伊予に伴わなかったのか」という点です。もちろん当時は交通事情も悪く、遠方への赴任は大変でした。だけど空蝉は後に夫に従って遠く常陸(茨城県)まで行っています。伊予だって一緒に行けたはずなのに、都に残ったせいで彼女は思いがけない災難に遭ってしまいました。大切な若妻から目を離しちゃいけません、というのが本日の第一の教訓。(明日に続く)

※本稿は関西インターネットプレス(KIP)より転載いたしました。

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